HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Digitalism Interview

フランスの名門レーベル Kitsune よりリリースされたシングル 'Zdarlight' によって一躍脚光を浴びることとなり、今ではポスト Daft Punk として世界中から注目を浴びているドイツ・ハンブルグ出身のエレクトロ・デュオ Digitalism。5月には前評判も高いファースト・アルバム "Idealism" (邦題 : "デジタル主義") のリリースも控え、ダンス・ミュージック・シーンの話題を独占しているところだ。

まさにトップ・アーティスト目前であり、5月下旬には大阪、東京と回る来日ツアーも控えた彼らに HigherFrequency はインタビューを決行。話題のアルバム "Idealism" についてはもちろん、 'Zdarlight' をはじめとするシングル曲についてのエピソードなどをボリュームある内容で語ってくれた。

> Interview : Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Introduction : Masanori Matsuo(HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : あなた方のデビュー・アルバム “Idealism” を制作される際に、全体的な目的やメッセージ、テーマなどはあったのでしょうか?

Digitalism : “Idealism” は、まるで本や映画のように、はじめから終わりまでストーリーのある仕上がりにしたかった。”Digitalism 印” のついた人間らしいストーリーを、それぞれ異なるチャプター(トラック)に分けたんだ。だから、ただ単に曲を集めてコンパイルしたものとは違うのさ。それに、既にリリースしたシングルを集めただけのアルバムは作りたくなかったしね。僕たちは昔からよくサウンドトラックを聴いていて、曲を作る時も、ある映画のことを考えたり、あるシーンやそのイメージを頭の中に思い浮かべて作ることが多いんだ。世界中を旅して、新しい世界を発見することも大好きだし、だから僕たちのアルバムには、カイロ (Digitalism In Cairo) や、地球上のクールなパーティー・スポット (Pogo) 、ジュピターでの冒険 (Jupiter Room) といった楽曲が登場してくる。重要なのは、こういった日々日常の経験なのさ。ただ、常にオープン・マインドでないとダメだけどね。僕たちの音楽を聴いて、刺激を受けて欲しいし、夢をみて欲しい。踊ってほしいし、街でもラジオでも聴いて欲しい。僕らは、人々が彼らの目標やアイデアに向かっていけるよう勇気づけたいんだ。平凡で変化のない世界にいると、大きなビジョンが見えなくなってしまう。僕たちは、人々に幸せを感じてもらって、大きな世界を見て欲しいんだ。

HRFQ : アルバムの中には、例えば ‘I Want I Want’や ‘Pogo’ のように、多くのジャンルを交差するトラックが収録されていますね。Disitalism は、インディー・ミュージック・ファンのためのエレクトロニック・ミュージックを作っているのでしょうか?それとも、その逆でエレクトロニック・ミュージック・ファンのためのインディー・ミュージックを作っているのでしょうか?

Digitalism : どういう音にしたいとか、誰に聴いて欲しいってことは特に考えてなかったよ。唯一自分たちが目安にしていたのは、自分たちが好きで、レコード・ショップにあったら実際に買うような音楽を作るということだけだった。以前この業界で働いていた経験があって、自分たちが好きになれない楽曲には飽き飽きしてしまっていたんだ。だから、好きな楽曲を作るということは、僕たちにとっても理にかなったステップだったというわけさ。5年前に初めてスタジオに入ったとき、お金を持っていなかったから、第二次世界大戦の時に使われた防空壕の中にあるスタジオしか借りることが出来なかったんだ。窓もなくて、日の光も入ってこないし、空気も薄い、がらんとした場所だったよ。だから僕たちの音は、荒くて尖った感じがするのかもしれないね。しかも機材は常にそこにあったものを使っていたんだ。(スタジオをシェアしていた他のバンドのドラム・セットやギターとかね)最終的には、バンドのアティテュードを持ったエレクトロニック集団ということなのかもしれないね。エレクトロニック・ミュージックに 曲の構成を加えることは常に可能だし、機械的な音の中にインディーっぽい要素を加えることも出来る。あと、僕たちが取り入れるジャンルって、やたらと音がデカいのものが多いんだ。そういう曲が大好きだからね。

HRFQ : Klaxons や Erol Alkan のように、あなた方の他にもインディーとダンスのクロスオーバー・シーンで活躍しているアーティストが数組いますが、これは偶然起こった動きなのでしょうか?それとも以前から彼らと一緒に共謀していたことなのでしょうか?

Digitalism : すべて自然に起こったことなんだ。音楽を作り始める前はお互いのことを知らなかったしね。ただ僕らに共通しているのは、ジャンルをミックスしたり、融合して、いい部分を引き出すのが好きってこと。僕らはみんな若いし、たくさんのアクションが必要なのさ。僕らは違うけど、同じシーンのアーティストには以前までバンドをやっていて、最近のエレクロニクスの発達に可能性を見いだした人が多いんだ。僕らはその逆だったけどね。クラブのバック・グランドから来て、ガラージ・バンドの姿勢やちょっとおバカなところ、パンクな態度にインスパイアされたんだ。だから、そういった世界規模の大きなプランは無かった。いろいろと情報やアイデアを交換したりするだけさ。だから大きな偶然じゃないかな?もしくは、何かが起こるっていう前触れかもしれないね。

Digitalism Interview


HigherFrequency (HRFQ) : これまでにリリースされた3枚のシングルはすべてヒットしましたね。そういったリスナーの反応に驚かれましたか?それとも制作の過程から何か特別な作品を作っているという確信はありましたか?

Digitalism : 実際、すごく驚いたよ。僕らは物事にすぐ飽きてしまうタイプだから、早く曲を書いて、プロデュースしたんだ。短気だからね。’Zdarlight’ は、作るのにたった一日しかかからなかったし、通常の楽曲と同様に、偶然出来上がったんだ。その日、僕らはただ新しく獲得したミクシングのスキルを試したかっただけだった。’Zdarlight’ は、作ってから半年くらい置き去りになっていた楽曲で、友達がプレイして「フロアでウケる」って言ってくれなかったら世に出ていなかったかもしれない。僕らもこんなにヒットするとは思っていなかったよ。‘Idealistic’ はもともとブートレグのB面に入る予定の曲だったんだ。だた、幸運にも、楽曲をプレスする予定だった人たちが、「ブートレグのことは忘れて、作品としてリリースしよう」って言ってくれてね。もし今の僕たちの周りで起こっていることをじっくりと考える時間があったとしたら、頭が爆発しちゃうかもしれないな。

HRFQ : また、これらのシングルは “The Twelve Inchies EP” というかたちで、リミックス・ヴァージョンも含めてリリースされましたが、アルバムのリリース後は他のアーティストにも楽曲のリミックスを依頼される予定ですか?

Digitalism : まだ分からないな。今までに他のアーティストにリミックスをしてもらったことがあまりないからね。僕らのスタジオには巨大なアウトプットがあって、すでに何通りもの解釈をした楽曲の別ヴァージョンを聴いてきたんだ。僕らは強いイメージを持って、そのすべてを各曲に注入しようとしている。僕らの楽曲タイトルが短くて視覚的…何か大きなものを表すシーンや物事であったりするのもそれが理由だよ。こういったイメージは楽曲に手を加えすぎることや、商業的に何の変哲も無いリミックスをされてしまうと、ブレてしまうんだ。僕らを除いて、Digitalism の楽曲に初めてタッチした人は Erol (Alkan)で、彼は ‘Jupiter Room’ のリミックスをしたんだけど、(これは Kitsune から “the Digitalism - Terrorlight EP” としてリリースされてるよ)あのリミックスはヤバいよ!ただ、誰に自分たちの楽曲をリミックスして欲しいかについてはすごく慎重なんだ。僕らにとって自分たちの楽曲やリリース作品は宝物のようなもので、機械的には扱えないのさ。

HRFQ : 最近のインタビューで Kitsune の Gildas が「“コマーシャル”や“ポップ”であることは必ずしも悪いことではない」と話していましたが、彼の意見には賛成ですか?

Digitalism : “ウィ!”もちろんさ。楽曲がラジオやテレビで放送されれば、“ポップ”な音楽と思われてしまうかもしれないけど、それはいいことだと思うよ。始めからそうなることを目的に作っていなければね。もしラジオしか聴かない人が大勢いたとして、そういう人たちが Digitalism の楽曲を聴くチャンスが出来れば単純に嬉しいよ。アンダーグラウンドでいることにこだわりすぎれば、自分の世界を制限してしまうことになるんだ。だけど僕らはそれより大きなビジョンを持って活動してる。ただポップ・シーンに向けて楽曲を作っているつもりはないよ。それよりも、自分たちのことや僕らの世界、考えを伝えたいだけなんだ。

HRFQ : 以前、 Daft Punk や Cassius といった、普段あなた方が同じジャンルにカテゴライズされるようなグループの楽曲のリミックスを手がけられましたね。あなた方はドイツ人ですが、どのくらいフレンチ・ハウスの影響を受けられてきましたか?

Digitalism : ?‘90年代後期に DJ をしていたときに、よくフレンチ・ハウスをプレイしてたんだ。僕らは、典型的なガラージ・ハウス系ヴォーカル・トラックよりも、こういった機械的なサンプル・スタイルの方に興味があるからね。確かに、ガラージ・ハウスもフレンチ・ハウスもディスコ的な要素に関連のある音だけど、ガラージ・ハウスはもっと R&B 寄りだと思うんだ。それに比べてフレンチ・ハウスは、ファンクとかヒップホップ寄りの音をしてるよね。だから僕らはフレンチ・ハウスの方に興味を寄せられるのさ。それから、‘90年代初期にダンス・ミュージックに入れ込み始めたから、同じループがずっと回ってるってことを発見出来たのも新鮮だったね。

HRFQ : 今年は、アメリカの Coachella をはじめ、多くのフェスティヴァルでプレイされると同時に、日本でのツアーのようにクラブ・ツアーも展開されますね。野外のフェスティヴァルでプレイするのと、ダークなダンス・フロアでプレイするのはどちらが心地よいですか?

Digitalism : 両方とも素晴らしいよ。フェスティヴァルで一万人の観客を前にプレイする時のアドレナリンといったらすごいんだ。どこで姿が切れるのかも見えないくらい多くの観客が、自分たちのプレイする音楽に盛り上がってくれる。これ以上に素晴らしいことがあるかい?今までに出演したどのフェスティヴァルでも、かなりロッキンでフレンドリーなクラウドと楽しむことが出来たよ。その一方で、フェスティヴァルではどうしてもクラウドとの距離が離れてしまうよね。小さなクラブでプレイすれば、クラウドとの距離も狭まるし、コネクションも強くなるから、その分一体感も出てくるんだ。

End of the interview

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