Renaissanceの新たなコンセプト Therapy Sessionsを立ち上げ、その第1弾コンピレーションを盟友のPhil KとリリースしたばかりのDave Seamanが、ゴールデン・ウイーク真っ最中の日本に再上陸。WOMBに集まった超満員のクラウドを、最高のプログレッシブ・セットで完全にノックアウトしてくれた。80年代にはMix Magの若き編集スタッフとしてアシッド・ハウス・ブーム到来を見事に予言し、その後もBrother In Rhythmの一員として、Janet Jacksonを始めとしてトップアーティストへリミックスを提供するなど、常にシーンのトップに君臨してきたDave Seaman。DJとしても非常に大きな成功を収めてきた彼が、盟友Phil Kと共にHigherFrequencyのインタビューに答えてくれた。なお、7月中旬には再来日も予定されているとのこと。今回の来日を見逃した人は、是非忘れずにチェックしておこう。
> Interview & Photo : Jim Champion _ Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)
HigherFrequency (以下HRFQ ) : 久々に日本に戻ってきて、気分は如何ですか?
Dave Seaman(Dave) : 今は随分よくなったよ。今日、香港経由でイギリスから来たばっかりで、16時間から17時間くらいのフライトだったので、かなりぐったりしていたけど、今は気分が良いね。
HRFQ : Phil、あなたはどうですか?今回が初来日ですか?
Phil K (Phil) : いや、東京に来るのは今回が2回目だけど、Wombでプレイするのは初めてなんだ。サウンド・システムがとても良さそうなので、本当に今から待ち遠しいよ。
HRFQ : 最近ではWombも、イベント制作とサウンドのクオリティの両面において随分と競争力を付けてきていて、世界の中でもベストなクラブの一つだという人もいたりしますが、どう思われますか?
Dave : その通りだね。ここでのイベントはいつも素晴らしいものばかりだし、もし、世界のトップ10クラブのリストを作るとしたら、Wombは間違いなくその中に入る事になると思うよ。結局DJが求めているのは、良いサウンド・システムと素晴らしいクラウドと言うものに尽きるわけだし、その意味でこのクラブはその両方を兼ね備えていると言っていいんじゃないかな。
HRFQ : Phil、Wombに関しての噂は耳にした事がありますか?
Phil : いつも聞いているよ。ホントにいつもね。ここは世界的にも有名なクラブだし、プレイする事が出来て光栄に思っているよ。
HRFQ : Dave、あなたのウエブサイトには日本語で「僕は日本と東京が大好きで、今や一番好きな街」というメッセージが書いてありますよね。このメッセージを見た日本のファンは、誇りに思うと同時にとても勇気付けられた事と思うのですが、日本のシーンのどういった所が面白いと感じていますか?
Dave : 間違いなく東京は世界の中でも有数の活気に満ちた街だと思うね。僕は今までメルボルンが世界の中でもお気に入りの街だと言ってきたけど、それは生活のクオリティや物事の進むスピード、それに物価とか言った観点からの事であって、活気に満ちた街といった観点から言うと、やはり東京がニューヨークやロンドンに比べても先を行っていると思うんだ。ワールドカップの時に2週間半ほど日本に滞在したことがあるんだけど、その時も本当に帰りたくなかったしね。この国にはいつも興奮と刺激に満ち溢れていて、みんなとても熱意に満ち溢れていると思うし、いつも日本を訪れるたびに自分が日本で学んだ事を他の人にも早く伝えたいと言う気持ちに駆られるんだ。東京に来るようになって随分になるけど、相変らず刺激を与えてくれているね。
HRFQ : いずれはWEB上の全てのコンテンツを日本語にするつもりですか?
Dave : 最終的にはそうなるかな。メッセージの中でも言っている通り、僕がDJである上で一番大切にしているのは「人とコミュニケーションをする」という事なんだけど、日本人とのコミュニケーションと言う事になると、言葉の壁もあってなかなか難しい部分もあったりするからね。あと、日本語以外にも何ヶ国語かに対応したいと思っていて、スペイン語なんかでも掲載したいと思っているんだ。もちろん音楽だけでもコミュニケートする事は十分に出来るんだけど、やっぱりみんなのフィードバックを後から聞くためには言葉によるコミュニケートも必要だからね。
HRFQ : 今回のTherapyのプロモツアーでは、アジアの他の国も周られると聞いていますが、日本のシーンと他のアジアのシーンについて、何か違いを感じられる事はありますか?
Dave : 香港は今ちょっと悪い状況にあるんじゃないかな。僕もPhilも最近香港でプレイしたばかりなんだけど、当局の取締りが本当に厳しくて、状況はかなり厳しいみたいだったよ。まぁ、アジアにはそれほど多くのクラブはないし、どこの場所もアップダウンの連続って感じだから、日本のシーンがエキサイティングである事に変わりはないね。シンガポールのシーンもそれなりに歴史のあるシーンだから、ある意味すごく確立されているところもあると思うけど、今の日本はいろんな勢いが集中している場所でもあるし、僕らにとっても一番エキサイティングな場所である事は間違いないと思うんだ。
HRFQ : "Therapy Sessions"に対しての反応は今のところどうですか?
Dave : 全体的には本当に良い反応を貰っているよ。なかには「余り好きじゃない」と言う変わった人もいるけどね。まぁ、みんなを喜ばせると言う事は無理なことだし、全体的にはいい反応だから、僕らとしては予想以上の反応が帰ってきていることに満足しているんだ。アルバム的なものを手がけるのは僕にとっても初めての経験だったし、何か新しい事を始めるときにはリスクは付き物だからね。その意味では、自分のベストを尽くす事が出来たと思うし、Philが途中から加わる事になって、結果的にはスゴクいい内容のファーストCDになったと思うよ。
HRFQ : Mix CDを作るときには、何かあるテーマを設けたりしますか、それともただ自分の好きな音楽をプレイするだけですか?
Phil : 決められた時間の中で、自分のベストを尽くしただけだよ。どのプロジェクトにも決められた時間があるし、その時間の中で最も適切な音楽や自分がカッコ良いと思えるようなものを探す努力をすることが大切だと思うんだ。
HRFQ : Phil、今回のあなたのパートはハウスっぽい感じからスタートして最終的にブレイクスへと展開していきますよね。
Phil : そうだね。ちょっとメロウな感じでスタートして、その後は最後まで色んな展開になっている感じかな。この作品は僕にとって勉強みたいな要素があって、もしみんなが今回のミックスを理解してくれて、僕のDJスタイルを好きになってくれたら嬉しいけど、もしそうじゃない人がいても、それはそれで仕方がない事だと思っているんだ。あと、何枚かテスト盤のレコードなんかも収録されていたりして、このCDを聞けば僕の2〜3時間のプレイを全貌を垣間見る事が出来るようになっているんだ。今回のミックスCDでは、みんなに僕が考えている事を理解してもらうために、そんなやり方でアプローチしてみたって感じかな。
HRFQ : と言う事は、完全に独立した2枚のCDと言う感じですか?
Dave :Mix CDと言うと、みんな単にレコードを集めてきてそれをミックスしているだけだと思っているでしょ。でも、今回の作品のスリーブにも書いたとおり、実際にはそんな単純なものじゃなくて、好きじゃないと出来ない時間のかかる仕事なんだ。最初は何となくの方向性を持ってスタートするんだけど、途中に本当にたくさんの紆余曲折があるし、他の曲をきちんとワークさせる為に絶対に必要なレコードが手に入らなかったり、許諾が取れなかったりすることもあるからね。それに僕は今まで何枚もミックスCDを手がけてきたし、みんな大体僕がどう言った音をミックスするかも知っているわけでしょ。だから、今回のTherapy Sessionでは何か新しい事をやりたいと思ったし、PhilやInfusion、Lexicon Avenueといった作品に参加してくれた人たちに自分達のやりたい事をやってもらう事でコンピレーションの新たな側面を示したいと思ったんだ。
HRFQ : 今回のアートワークに関してもディレクションに関わられたんですか?
Dave : うん。ロゴを作ったのはPhil Simmsという奴で、彼が全てのことに関わってくれたんだ。今までもずっと長い間一緒に仕事をしてきた仲なんだけど、これからもその関係は続いていくと思うよ。
HRFQ : さて、Phil、今回Wombでプレイするのは初めてと言う事ですが、多くの日本のクラバーたちが既にあなたの名前を「次に来るトップDJ」として耳にしていると思います。でも、まだあなたの事をよく知らない人もいると思うので、自分のスタイルをちょっと紹介してもらえますか?
Phil : 今は、ブレイクビーツを中心にプレイしているね。それは単純にブレイクビーツの方が面白いと思うし、刺激的で新鮮だと感じるからなんだ。と言いながらも、それも毎週ごとに変わっていくんだけどね。先週のメルボルンに出かけた時に何枚かレコード買ったんだけど、その中で一番良かったのはジャーマン・テクノのレコードだったりするんだ。だから、3ヶ月くらいしたら「今はジャーマン・テクノにはまっているよ」なんて言っているかもしれないね。まぁ、音楽がどこへ向かっていくのかは僕には分からないし、僕としては常に曲を聴いて、何が面白いかを見つけるように心がけておくのが全てって感じかな。でも、それは決して何がトレンディーかと言う事じゃなくて、その曲を聴いた時に何を感じるかって事が大切だと思うんだ。まず第一には、自分で踊りたくなるような曲かどうか?そして2番目には、今まで考えもしなかったような場所へ連れて行ってくれるような曲かどうか?あるいは、新鮮かどうか?常にそう言ったところに自分自身の視点を置くようにしているかな。
HRFQ : Dave、ここであなたのWeb Siteの話に戻りますが、あのメッセージはこれからもっと日本で色んな活動をスタートさせると言う事ですか?
Dave : うん、是非やってみたいね。それに僕は制作活動も再開していて、今Brother In Rhythm(かつてDaveが組んでいたプロデューサー・ユニット)の派生プロジェクトを何人かの人間と始めようとしているんだ。何曲か音も作り始めているし、My own first enemyというシングルの準備も出来ているしね。他にも幾つか計画している事があって、今、それらの作品をリリースしてくれるパートナーを探しているところだよ。
HRFQ : 日本に関してはどうですか?
Dave : 何人かの人間と話をしているところなんだけど、何かお互いに利益になるような交流をスタートしたいと考えているんだ。あと、日本にはもっと定期的に来るようにしたいと思っていて、7月の終わりごろには再び来日して、今度は幾つかの地方都市も回ることになると思う。
HRFQ : もの凄く忙しい中、たくさんのデモCDを受け取られると思いますが、お二人とも聴いたりする時間はありますか?
Dave : 正直言うと、ミックスCDはあまり聴かないね。さすがに聴く時間がないから、殆ど誰か他の人に渡して聴いてもらうようにしているんだ。でも、楽曲のデモ、新曲だったらなるべく聴くようにしているよ。ミックスCDも昔は全部聴いていたんだけど、今ではこんな忙しい状態になってしまったので、それも出来なくなってしまったんだ。聴くのが遅れがちになって、ストレスを感じてしまう部分もあったからね。だから最近では、僕の好みを知り尽くしている長年のパートナー人に、その辺の事を任せるようにしていて、気にいったのがあれば、僕のWebにゲストミックスとしてアップするようにしているんだ。
HRFQ : 最近DJ活動の方が多くなっていると思いますが、楽曲制作から少し離れてDJ活動の方にシフトしていったきっかけは何ですか?
Dave : まず第一に、DJをしている時の方が気分がいいからさ。(楽曲制作に関しては)余りに長い時間をスタジオで過ごしていた事もあって、何となくベルトコンベアーの作業みたいになっていたし、それに毎週1曲のリミックスを仕上げなきゃいけないような生活から抜け出したかったと言う部分もあったしね。まぁ、それと同時に全世界的にCDが売れなくなっていって、あえて制作活動を減らそうとしたわけじゃないんだけど、そう言う流れになっていったって感じかな。でも、これからはちょっと少し元に戻る感じでスタジオワークも増やしていこうと思っているんだ。
HRFQ : 今後の話ですが、どのようなプロジェクトが予定されていますか?
Dave : これまでに話したこと以外には、チルアウト系のアルバムを制作しようと考えている。Rehabと言うダウンテンポやチルアウト系の作品を中心にしたTherapyの新しいシリーズなんだけど、今年の終わり頃には1枚目が出てくる事になると思うよ。あとは、さっきも言ったとおり、オリジナル作品をいくつか出していこうと思っている。Therapyのコンセプトの元で何枚かリリースする事になると思うし、レーベルも今年中にはキックオフしようと考えているんだ。
HRFQ : 最後に、アジアのファンに何かメッセージはありますか?
Dave : 自分達のシーンをしっかりと見守っていって欲しいと思う。他の多くの国では、いつも何かをもらう事だけを考えて何も返そうとしない人たちがシーンを踏みにじってきたからね。でも、ここのシーンはまだ新鮮だし、とてもエキサイティングなものを作り上げつつあるわけだから、是非ともきちんと見守り続けていって欲しいと思う。ポジティブさを失わないで欲しいし、自分達がその場に立ち会えるってことに感謝をして欲しい。物事を合理的に考えようとすればすぐに利己的な考え方が取って代わるだろうし、それこそが終わりの始まりだからね。ダンスミュージックは、外に出かけていって楽しい時間を過ごし、音楽を楽しむと言うもの以外の何物でもない。でも、人間と言うのは、「何故、何故、何故」と知的に物事を考えてばかりいると、あながち陥りやすい罠にはまってしまいがちだし、それが結果として物事の価値を下げ、そして弱めてしまうって言うこともあると思うんだ。だからみんなには、とにかく新鮮かつリアルなままに(シーンを)キープしていって欲しいと願いたいね。
End of the interview
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