「イギリス・テクノ・シーンのドン」…なぜかこの表現がピタっとはまってしまうくらい、Dave Clarke というアーティストの持つ貫禄というものにはいつも圧倒されてしまう。そのいつも何かに怒りを感じているような表情は勿論、軟弱なジャーナリズムをこき下ろし、安易につくられたコマーシャル・トランスに猛然と牙をむく発言…。「歯に衣着せぬ」を通り越した、そのストレートで問題意識に満ち溢れたアティテュードに、彼の音楽に対する真の愛情を強烈に感じてしまうのは、きっと筆者だけではないだろう。
全世界のテクノ・シーンの流れを変えたと言われる2枚のEP「Red」「Red2」の発売からはや11年。最近では Chicks On Speed をフィーチャーした「What Was Her Name?」が世界中のフロアを賑わすなど、そのスタイルはエレクトロ系のサウンドへと大きくシフトしながらも、相変わらずトップ・クラスのクオリティを維持しており、その風格にふさわしい素晴らしい活躍を続けている。
この6月には元 React の連中が立ちあげた新レーベル Resist から、前作では7万枚ものセールスを上げたミックスCD「World Service」の第2弾をリリース。そのプロモーションの機会を捉えて、Jonty Skrufff がインタビューをすることに成功した。
> Interview : Jonty Skrufff (Skrufff.com) _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)
Skrufff (Jonty Skrufff) : まずコンピレーションのお話から伺っていきたいと思います。全体を通して、今回のコンピレーション制作はスムーズに進みましたか?それともかなりの時間を費やしましたか?
Dave Clarke : コンピレーションの制作というものは、いわばバランスをとることだから、今回は結構時間がかかったよ。契約をしてちょうど一ヵ月後に、自分の父親とツアー・マネージャーの二人を同時期に亡くしてね。コンピレーションの完成にあまり遅れが出ないようにしたかったけど、本格的に制作に取り掛かれるまで2ヶ月以上もかかってしまったんだ。でも Resist のスタッフはそんな状況をすごくよく理解してくれたよ。コンピレーションの制作に戻れたときはすごく嬉しかったし、かなりの時間と労力を費やした価値のある仕上がりになったと思う。当初は Helmet や The Ruts、Tom Vek なんかのトラックを含めた、少しパンクっぽいアルバムにしようと思ってたんだけど、売るCDとしてあまり相応しいとは思えなくなってね。最終的にはテクノとエレクトロがバランスよく入った感じになったんだけど、正しい決断をしたと思ってるよ。
Skrufff : 今回の作品は、リスナーを "楽しませる" CDですか?それとも リスナーに"いいトラックを教える" CDですか?
Dave : 常にその両方を考えるようにしてるよ。同時にコンピレーションは、自分がクラブでプレイしているもの、これからプレイするものを表現するものであるべきだとも思うんだ。でも、"教える"っていう言葉はあまり使いたくないな。だって、何だかこっちの方が頭が良いみたいじゃないか。そういう言い方は正しくない。音楽は僕の職業だし人生だから、通常のリスナーより僕の音楽の知識がもっとシャープなだけ。だから僕はその知識を使って、何かエキサイティングで革新的なことを表現していきたいだけなのさ。
Skrufff : プレス・リリースに、 "CDは愛用のTechnics DZ 1200を使って録音された"と書かれていますが、ワン・テイクで録音したのですか?それとも後からコンピューターで修正を加えたりしたのですか?
Dave : コンピューターは使っていないよ。CDプレイヤーでやるほうが楽しいからね。あらかじめ仕上がりが見えるやり方よりも、自分のキャリアが試されるようなプロセスがいいんだ。
Skrufff : また、プレス・リリースには同時に「テクノのDJは他のジャンルのDJに勝るミックス・スキルを持っている」と書かれていますが、最近、DJ中にミスをすることはありましたか?それともCDプレイヤーを使ったのミックスではめったにありませんか?
Dave : どのDJでも、絶対にミスはするし、僕だってもちろんするよ。確かにCDを使ってのミックスはある意味簡単さ。例えば、キューが素早く出来るとかね。でも同時にCDを使うと出てくる問題もあって、例えばCDプレイヤーってアナログのターンテーブルみたいに真ん中に回転軸がないでしょ。だからピッチを微調整するために、他の技を見につけないといけなかったりするんだ。あと、Ableton をつかってミックスするのもかなり簡単さ。この場合はプリ・プロ(事前の準備)が大事になってくるわけだけど、いざプレイをする時にビートも何も加えることが出来ないし、僕にとってそれはDJをやっているとは言えないんだ。ただ、リスクなしでつなげてるってだけだね。
Skrufff : 例えばクラウドが無反応だったことが原因で、あまり楽しめなかったパーティーの経験がありますか?DJをリタイアしようと思ったことはありますか?70歳になってもDJをしていると思いますか?
Dave : 70まで生きてるかもどうかも分からないね。ごくたまに上手く行かない夜もあるけど、僕はいいエージェントに恵まれてるし、直感ってものがあるから大丈夫。リタイアについて言うと、もちろん僕には後数年しか残っていないってわかっているよ。でもDJをエンジョイできる限りは続けるつもりさ。
Skrufff : かなり頻繁にDJをなさっていますが、どのくらいの頻度でマジカルな、思い出深いギグを経験しますか?多くのDJが語るようなパワーやマジックを信じますか?
Dave : 先週は素晴らしいギグを2つも経験したよ。僕はかなり頻繁に素晴らしいギグを経験するんだけど、音楽や雰囲気、全てのものが僕が夢みていた以上の状態になって、感極まって涙さえ出てくるときがあるんだ。宗教的なパワーを信じてるわけじゃないんだけど、でもそうやって生み出されるパワーには、リスペクトすべき素晴らしい本質があるってことだけは信じているね。
Skrufff : 最近アムステルダムに移住されたそうですね。なぜアメリカやオーストラリアではなく、オランダという場所を選ばれたのですか?
Dave : そう、アムステルダムに引っ越したよ。ちょっとした皮肉なんだけど、実はここには1988年に初めてギグをした当時からずっと住もうと思っていたんだ。外見は自由奔放に見えるけど、とってもピースフルな町だからね。でも、年中アムステルダムに住んでるってわけじゃなくて、イギリスでもある程度の期間は過ごしてるんだ。
ただアメリカに関しては、Bush が政権を握ってる以上、絶対に住みたくないし、住むことを考えもしないね。いろんなプロモーターが僕をブッキングしようとしたし、友達にも誘われてはいるんだけど、Bush がアメリカを好戦的な国に仕立て上げている以上、DJとしてあそこでプレイする気はない。NYは好きなんだけどね。メルボルンはいいよ。素晴らしい人々に食べ物、ヨーロッパに比べて土地もすごく安いし…でも遠すぎる。僕にとってオーストラリアはリタイア後に住んだり、ヴァケーションで年に何回か訪れたい場所なんだ。今の仕事をしている以上、ヨーロッパに住まなくちゃ話にならないよ。
Skrufff : 今はご自分のプライベート・ジェットで旅されているそうですね。ずばりプライベート・ジェットの魅力はどこにありますか?また、旅をしていて危なかった場面などありましたか?
Dave : 旅が便利になったし、さらにたくさんのギグに出演できるようになったよ。でも確かに怖い経験もたくさんあったね。一度エンジン故障があって、燃料が右側の翼のタンクから漏れてたんだけど、緊急着地の間に爆発でもしてたら、丸焦げになってたと思うよ。
Skrufff : 最近、DJ Mag 上で「俺はパンクが大好きなんだ。正直、ほとんどのパンク・ミュージシャンが知識人だとはいえないけど、俺にとってベートーベンは、意外性のない、つまらない音楽なんだ。つまり何が言いたいかっていうと、知識があるがためにエナジーが抑えられてしまうことがあるってことさ」と話していらっしゃいましたが、あなたは自分自身をパンクだと思われますか?また、あなたにとってのパンクとは何を意味しますか?
Dave : パンクとは、権力に中指を立て、嫌な奴らを蹴り倒し、物事をめちゃくちゃにして、力のある奴の言いなりにならず、インディペンデントでいること。パンク音楽やその精神には今でもすごく共感を覚えるけど、Mclaren や Westwood 関連の偽モノはクズだと思うよ。
Skrufff : テクノがつまらない、意外性のない音楽だと思ったことはありますか?
Dave : どの音楽でもそうなる可能性はあるんじゃない?常に面白くて、意外性のある音楽を見つけて、つくりがいのある音楽を努力してつくっていけばいいだけのことさ。
End of the interview
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