HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Cristian Varela


スペイン随一の人気と実力を誇るハード・ミニマルのDJ/プロデューサーCristian Varela。猛牛のごとくに暴れまわる疾走系トラックを鮮やかに料理し、世界各地のパーティー、フェスティバルを闘牛場のように熱狂させてきたテクノ界のマタドール…そんなハードなイメージがどうしても付きまとうCristianであるが、以外にもピアニストとしての長年のキャリアを持ち、何と次回のオリジナル・アルバムは完全なクラシック・アルバムになるという意外な側面を持ち合わせている。 スペイン国内のアワードで何度もベストDJを受賞し、Marco Baileyと共に運営するPornographic Recordingsも絶好調。最近ではCarl Coxとの親交も深め、Intecからも作品をリリースするなど、ヨーロッパのテクノシーンで名声を欲しいままにしているCristianが、昨年11月にageHaにて来日公演を行い、その際にHigherFrequencyとのインタビューに答えてくれた。ビデオ・インタビューの方は約9分間のダイジェスト版であるが、こちらは20分のインタビューの全貌を伝える完全版。レーベルのこと、次回作のこと、そしてこれからのテクノ・シーンのことなどについて熱く語ってくれている。

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> Interview : Laura Brown (ArcTokyo) _ Translation : Eri Nishikami _ Photo : Mark Oxley (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 日本へようこそ。今のご気分は?

Cristian : 日本には何回か来ているから、今ではすっかりお馴染みになった感じだね。最初はそれこそメチャメチャ興奮したものだよ。ネオンや街の雰囲気…どれをとっても驚きの連続だった。もちろん今でもその気持ちは変わらないし、日本はとても特別な国ではあるけど、前よりはずっと馴れたって感じかな。

HRFQ : 明日のageHaではどんな感じのセットになりそうですか?

Cristian : ターンテーブル3台でプレイするってことは決まっているけど、どんな音楽をかけるかは、いつも事前にプランを立てたりはしないんだ。ダンスフロアで何が起こるかはわからないからね。いつも新しい世界が広がっているし、セット自体も毎回完全に違う。プレイし始めて10分くらいすると、その日のプレイの予想は大体つくんだけど、ブースに到着するまでは全く予測不可能だね。

HRFQ : 確かブラジルツアーを終えたばかりだと思いますが、以前ブラジルのテクノシーンは毎年どんどん大きくなっているとおっしゃっていましたよね。ヨーロッパと南米のシーンを比べてみて如何ですか?

Cristian : 最近はスゴク似通ってきたと思うよ。3、4年前はブラジルではテック・ハウスやハウスが流行っていたから、テクノをプレイするのはとても大変だったけど、今ではみんなテクノの素晴らしさも分かってくれているし、DJがターンテーブルを使って何をやっているかも完璧に理解しているからね。違いがあるとすれば、お客がスゴク”熱い”ってことかな。ちょっと何かをやっただけで、みんな「わぁ〜」って騒ぐ感じ。スペインもそういうところがあるかもしれない。でもドイツとかベルギーそれにオランダなんかだと、ホットはホットでも、もう少しみんな音楽に集中している感じで、なんだか一挙手一投足を見られているような、そんな感じがするんだ。それもまた良いけどね。

HRFQ : 今のスペインのテクノシーンはどんな感じですか?

Cristian : スペインのテクノシーンはとても大きくて、クラブにはいつも2〜3千人の人がやってきて常に満員状態なんだ。毎週スペインのいろんな街に世界各地からアーティストがやってくるし、それにSonarやFestimad、LoveParadeといった大きなフェスもあったりして、とにかくテクノシーンはすごく大きいよ。あとハウスもそうかな。

HRFQ : 日本のシーンがすごくブラジルやスペインのシーンに似ているとおっしゃっていましたが、どういう点でそう思われますか?

Cristian : 盛り上がり方がとても似ているんだ。日本人はアーティスティックなものをとても特別なものとして捉えているから、いつもDJがやっていることをもの凄く集中して見ていると思うし、とにかくエレクトロニック・ミュージックに関しては、ここの文化は最高だと思うよ。去年、リキッドルームでのセットが終わった時、何人かの日本人がブースにやって来て「何々RecordのミックスのあとにMarco Corola、その後にMarco Baileyをかけてたよね」って声をかけてきたんだ。僕がやったミックスのことを覚えていて、おまけにどの曲をどんな風にミックスしたかさえも知っているんだよね。スペインやブラジル人たちテクノが好きだし理解もしている。でも、どのレコードをどんな風にミックスしたかは流石に知らないからね。ホントにスゴイ国だよ、ここは。

HRFQ : つい最近Phrenetic Societyの10周年パーティーをCarl CoxとMarco Baileyを招いてスペインで行いましたよね。Pharenetic Societyの主な活動を教えていただけますか?

Cristian : Phrentic Societyはエレクトロニック・ミュージック系のフェスを運営している会社なんだ。それに輸入盤ショップや洋服屋、それからプロデューサーの学校なんかも運営しているし、あとDJのエージェントもやっている。とにかく色んなことをやっている会社なんだけど、それらを全てミックスして自分達のフェスにまとめていくのがメインの仕事なんだ。Pharentic Societyの全てが一つの場所、ひとつのフェスティバルに集まる…それが僕らのやっていることさ。

HRFQ : あなたの会社での役割は?

Cristian : 僕と兄貴の二人は会社の共同経営者なんだ。他にもいろんなエリアでいろんな人が働いているよ。

HRFQ : それ以外にもMarco BaileyとPornographicレーベルを運営していますよね。それぞれの役割分担はどうなっているのですか?

Cristian : レーベルマネージャーは僕。いつも世界各地からたくさんのデモが送られてくるんだけど、それをピックアップして新譜としてリリースする。あと勿論、僕とMarcoの曲は必ず一曲ずつ入れるようにしていて、残りを新人やゲストアーティストの曲を入れるって感じかな。

HRFQ : 新人を選ぶ時の基準は ?

Cristian : とても大切なことは、音楽がアンダーグラウンドであること。でも、アンダーグラウンドの中にも、売れそう要素がないとダメ。すごくアンダーグラウンドな曲だったとしても500枚しか売れないんじゃ会社がつぶれちゃうからね。だから、アンダーグラウンドでありながら売上的にも見込める作品をギリギリに絞り込んで選ぶようにしている。でもコマーシャルな領域には入り込まない…すごく難しいんだけどね。大体いつもは2曲ファンキーなトラックを入れて、2曲をアンダーグラウンドで実験的な音楽を収録するようにしているよ。だから、レーベルの作品の中には、アンダーグラウンドな音もあればそうでないものある。でも決してコマーシャルにはならないようにしているんだ。

Cristian Varela

HRFQ : Carl CoxのIntecレーベルからもうすぐシングルが出ると思いますが、このリリースについて詳しく教えていただけますか?

Cristian : 今ではCarlのマネージャーが僕のマネジメントもやってくれているんだけど、むかしある時、僕がクラシック寄りのアプローチでプロデュースしたチルアウト系作品を彼女に聴かせたら「あら、すごくイイじゃない。この曲あなたが作ったの?」と言ってくれたんだ。それで彼女は僕のエレクトロニック・ミュージック系の作品にも興味を持つようになったというわけ。Carl自身は何枚も僕の作品を持っていたし、ずっと前から僕のことをプロデューサーとして知っていたんだけど、彼のマネージャーはそうじゃなかったんだ。で、ある日、彼女から「Carlがあなたの新作を聞きたがっていたわよ。何枚かレーベルに作品を送って」と言われて…。そしたらスゴク気に入ってくれて、今度Intecから出すことになったんだ。

HRFQ : あなたにデモテープを送りたいと思っているDJやプロデューサーに対して何かアドバイスはありますか?

Cristian : もちろん。たくさんあるよ!でもその中から3つを選ぶとすると、自分の好きな音楽をいつでもプレイすること。トレンドを追いかけるんじゃなくて、自分が好きと感じたものをプレイすること。そして2番目は、プレイする時に悪いものを取らないこと。何を言っているかはわかるよね。それから3番目は自分自身に自信を持つこと。長いあいだ続けられる秘訣はそれだけだよ。

HRFQ : 今たしかニューアルバムの制作中と聞きましたが、今回の作品はダンス系のアルバムではなくて、完全なクラシック系のアルバムらしいですね。このアルバムのコンセプトを教えてもらっていいですか?なぜクラシック・アルバムをやろうと思ったのですか?

Cristian : 僕はすごく幼い頃からピアノを習っていて、昔はいつもクラシックとエレクトロニック・ミュージックを並行して制作していたんだ。でも、91年からはずっとエレクトロニック・ミュージックばかりをプロデュースしてきたから、そろそろより音楽的なクラッシックをやってもいいかなって思うようなってね。

HRFQ :そのアルバムについてもう少し詳しく教えてください。ピアノのほかにも楽器を担当されているんですか?

Cristian :楽器はすべて僕が担当してるんだ。midiがあれば何でも出来てしまうからね。ストリングスも、ピアノもハープも全部キーボードで弾いたんだけど、事前にすべて作曲してあるんだ。一つ一つのトラックに愛情だったり、パニックだったりっていう違う感情が表現されているんだ。もう7曲出来上がっていて、あと5曲くらいつくれば完成かな。全部で12−14曲くらい入れたいからね。完成は来年の3月か4月を目指してるよ。

HRFQ :どのレコード・レーベルからのリリースを考えているのですか?

Cristian :大きいレーベルになると思う。まだしっかりと決まってないから言えないけど、リリースの際には世界中で大きいプロモーションが展開される予定だよ。

HRFQ :Final ScratchやTraktor、 Ableton Liveといったニュー・テクノロジーについてどう思われますか?実際に使われたことはあるのですか?

Cristian : Final Scratchは好きだな。実は、僕はスペインでFinal Scratchのイメージキャラクターをやっていたんだよ。2年前に製造元のStantonから電話がかかってきて、「君はスペインでナンバー1だし、イメージキャラクターをやって欲しいんだけど・・・」と言われたので引き受けることにしたんだ。だから、Final Scratchは好きだな。ミックスさえ良ければ新曲をすぐに試聴することが出来るし、レコードが使い物にならなくなったような昔の曲だって簡単にプレイできるんだからね。それに、コンピューターには2000曲もトラックが入るから、わざわざ思いレコード・ケースを持ち歩かなくていいし。でも、僕の使い方はあくまで補助的なもので、アナログと半々で併用するようにしている。やっぱ、アナログだと全然違うからね。だから、あくまでファイナル・スクラッチは補助的なものとしては素晴らしいけど、あくまで補助的なものとして使っているんだ。

HRFQ :ニュー・テクノロジーの発達によって、音楽制作がより簡単になったと言われていますが、その結果、機械的で感情のこもっていない音楽が増えるのではと懸念する声もあるようです。あなたはどう思われますか?

Cristian : 僕はいいと思うな。当初、ニュー・テクノロジーが出回り始めた頃にはあまりよくないことだと思ったんだけど、結局はすごくいいことだと思うようになったんだ。たくさんの人が音楽をつくるようになれば、さらに多くのポテンシャルのある人が出てくるようになるしね。それに、ポテンシャルのある新人が出てくれば、僕たちみたいにながく音楽をつくっている人間も、さらにいい音楽をつくるように努力するでしょう?そうでもしなければ、若いクリエイターに追い越されてしまうからね。とにかく、いいことだと思うよ。そうすれば音楽はいつも向上し続けるんだから。

HRFQ :テクノ・ミュージックの今後についてどう思われますか?さらに他の音楽ジャンルと融合されたスタイルになっていくと思われますか?

Cristian : そうだね。それがあるべき道だと思う。今でさえも様々な音楽の融合 _ 例えばテクノとハウスやテクノとアトモスフェリックな音楽などの間に起きている融合を目にすることが出来るし、いずれは色んなジャンルが混ざって一つのスタイルへと収束していくと思う。だから、テクノも何年かすれば、よりアトモスフェリックな感じか、テック・ハウスみたいな感じになっていくと思うよ。いろんなエレクトロニック・ミュージックが混ざり合って一つになる・・・それがこれからのあり方だね。

End of the interview

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