Strictly Rhythm、 Nite Grooves といった数々の名門ハウス・レーベルで活躍し、 'Cascade Of Color' や 'Kiss Kiss Kiss' などの大ヒット・ハウス・アンセムを生み出したことでも知られるアメリカはアトランタを代表するグループ Ananda Project。今年の3月には、約4年ぶりとなるニューアルバム "Fire Flower" をリリースし、再び世界のハウス・シーンで話題を浴びているところだ。
4月には、そのアルバムのリリースを記念した来日パーティーが行われ、多くのクラウドを揺らす盛大かつプレミアムなパフォーマンスを披露してくれた彼らに HigherFrequency がインタビューを決行。ニュー・アルバムについてはもちろん、アトランタでの環境、トラック制作面での過去からの変化などを和やかに語ってくれた。
> Interview : Len Iima (HigherFrequency) _ Translation : Ryo Tsutsui (HigherFrequency) _ Introduction : Masanori Matsuo (HigherFrequency)
HigherFrequency (HRFQ) : ニューヨークやシカゴなどはハウス・シーンが盛んなことで世界的に有名ですが、アトランタはそれほどではありませんね。今までに大きな都市に移ろうと考えられたことはありませんか?
Chris Brann: あまり考えたことはないな。「成功したけりゃ、ニューヨークに行かなきゃ」なんて言われてるけど、僕はアトランタが素晴らしいと思っているんだ。アトランタにいると自由があって、自分らしくいられるし、流行に合わせなくちゃいけないと思うこととか、競争のプレッシャーもない。例えばニューヨークだったらどこのクラブでプレイするとか、どのレーベルに所属してるとか、とにかく競争が激しいけど、僕はそういったことを考えずに音楽を作ることに専念すれば正しいアプローチや正しい場所を見つけられると考えているんだ。甘い理想主義的な考えかもしれないけどそれこそが大切だと考えてるよ。だからある意味アトランタじゃなくたって、例えばアイスランドだって別にいいのさ。アイスランドからも素晴らしい音楽が生まれているしね。
HRFQ : Ananda Projectについてもう少し教えてください。あなたがたはどういった経緯で最初の ‘Cascades of Colour’ をリリースするに至ったのでしょうか?
Chris Brann: 特になにか構想があったわけじゃないんだ。具体的なプロジェクトにしようとも考えていなかった。もともといろいろな曲と共に ‘Cascades of Colour’ の入ったデモのカセットを作っていたんだけど、それを特に期待もせずに軽い気持ちで King Street の A&R に渡してみたんだ。そうしたら彼らが ‘Cascades of Colour’ を聴いて、「是非出すべきだ」といってくれた。それからいろいろなことが動き出したんだ。その時に比べると僕らももっと洗練されて、完璧とは言わないけど、高度に研ぎ澄まされたところまでは来れたと思う。そしてこのアルバムには、それを反映出来たと思っているよ。
HRFQ : Ananda Project はバンドなのでしょうか?
Chris Brann: うーん…そうとも、そうでもないとも言えるね。理想的にはバンドとしてやりたいと思っているよ。だけど経済的にはなかなか難しくて、実際の作業上はこのボーカルをカットしようとか、この人を呼んでやってみようとか、個別の作業を行っていて、皆がそろってスタジオで演奏することはないね。コンピューターを使ってデータのやりとりをしたりしながら進んでいくんだ。本当は同じ場所で音を出してやりたいけれどね。ショーをやるときだって10人のバンドを連れていくことはできないから、小さなセットで音楽を届けることを考えなくてはならない。ただ、妥協案ではあるけれども、たまにベース・プレイヤーだけを入れたりすることもあるんだ。
HRFQ : ‘Fireworks’ や ‘Let Love Fly’などのヴォーカル・トラックでは、ビートとヴォーカルのどちらを先に作りますか?それとも一緒に作るんですか?
Chris Brann: どちらのパターンもあるよ。Terrence が歌った ‘Fireworks’ を例にとると、あれは先にトラックが出来ていたんだ。すでに完成されていて、別の人がつけたメロディもあった。もちろんそれは悪くはなかったけど、どうもしっくりこなかったんだ。だから Terrence に渡してみたんだけど、彼はすぐにピンと来たみたいで、どんなメロディをどのように歌えばこの曲が素晴らしいものになるかを理解して作ってくれたんだ。直感的にね。そんな風にして自然に出来たトラックこそいいものなんだよね。
HRFQ : 今回の ‘Fireflower’ は ‘King of My Castle’ ほどの成功をおさめると思いますか?
Chris Brann: ‘King of My Castle’ のヒットは僕の人生に起こった奇妙な出来事だったよ。それまでそんなことが起こるとは全く考えていなかったからね。当時の僕は自分をアンダーグラウンドなディープ・ハウス・クリエイターと捉えていて、コマーシャルな音楽なんて嫌いだって感じだったから。実際にあの曲がヒットして世界中で200万枚も売れて、それまでの自分の考えや、それまで自分自身に持っていたイメージと矛盾してしまっていると感じて、非常に居心地の悪い思いをしたんだ。でも今はアーティストとしての部分とコマーシャルな部分を両方共存させることは可能だと考えるようになっていて、バランスをとることが出来るようになったよ。そういう風に考えることが出来るようになって、精神的にも肉体的にもドアが開いたというか、何でも可能なんだと感じれるようになった。‘Fireworks’ は、僕が想像していないような成功を収める可能性だって持っていると思うし、そういう風にオープン・マインドになることは大事だと考えているんだ。
HRFQ : あなたは以前、「自分が作りたい音楽は技術的に自分の能力では作ることが出来ない」とおっしゃっていましたが、今もそのように感じていますか?
Chris Brann: 僕は他の人の作品を聴くたびに、「どうやったらこんなに気持ちよく聴こえるんだろう?」って考えたり、ミックスの素晴らしさや技術の高さにいつも驚かされたりしてるんだ。その度に自分の未熟さを感じさせられているよ。ただ、自分ならではの空気を表現したり、僕らグループにしか持ち得ない特定の印象を音楽に盛り込むことを大切にしていて、そういうことが技術を持つことよりも大切だと考えているけどね。
HigherFrequency (HRFQ) : あなたは以前、「自分が作った音楽を楽しめない」ともおっしゃっていましたが、今でもそう感じていますか?
Chris Brann: それはちょうど ‘King of My Castle’ のヒットで居心地の悪い思いをしていたときだったんだよ!今ではもっと人生を楽しめるようになったし、音楽とか人との友情とか、いろいろ楽しめるようになったのさ。
HRFQ : これからのあなたや Ananda Project の動きについてお聞かせください。
Chris Brann: 僕たちはまだ誰も聴いたことのない、本質的に新しいことに挑戦したアルバムを発売するところなんだ。ただ、果たしてそれが素晴らしい出来なのか、そうでないのかまだ分からないけどね。あと Terrence Down のソロ作品を制作するよ、Ananda のテイストがありながらもヒップホップや R&B、ソウルなど多様な要素が入った作品になる予定なんだ。それから7年ぶりに、Wamdue Project のアルバムも出す予定だよ。
End of the interview
関連記事
パーティー・レポート : URBANPHONICS presents ANANDA PROJECT @ YELLOW, TOKYO (2007/04/28)