HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Ame Interview

「’Rej’ は確実にヒットするトラックだと思ってたけど、それはあくまでも僕らが想像できるアンダーグラウンドの範囲内でのことで、まさかここまで多ジャンルにわたって多くのリスナーに聴かれるようになるとは思ってもみなかったよ」

エクスペリメンタルなハウス / フュージョン・レーベルとして多くの支持を受ける Sonar Kolletiv のコア・メンバーとして活躍しながらも、大ヒット・トラック ‘Rej’ をリリースするまでは、比較的控えな批評と認識を受けるユニットであった Kristan Beyer と Frank Wiedemann による Ame 。

「当時 ‘Rain’ という ’Rej’ とは全く別のトラックを2ヶ月かけて作っていたんだけど、いろいろ手を加えすぎて最終的に全然ダメなトラックになってしまったんだ」メンバーの Kristan は笑いながらこう話した。

「だから結局その曲は途中で放り投げてしまったんだけど、トラックで使っていたアルペッジョを他の曲に流用できるかもしれないって思ったんだ。まずはメインのメロディーをシンプルにするところから始めて、それから3日間で ‘Rej’ を完成させてしまったのさ」

彼らのインディー・レーベル Innervision からリリースされた ‘Rej’ は、それから12ヶ月の間に2万枚のセールスを達成し、 Pete Tong (Skrufff とのインタビューで「昨年のベスト・トラック」とコメントしていた)を含む多くの 名 DJ から絶賛された。また、最近ではイギリスの 名門ハウス・レーベル Defected とワールド・ワイドでのリリース契約を果たし、Louis Vegas や Francois K.、 Timmy Regisford といったハウス・シーンの大御所にもプレイ。’Rej’ がジャンルを超えた支持を受けていることを世界に証明した。しかし、Kristan はこのトラックがミニマル・シーンにおけるアンセムとして祭り上げられることに、不満を抱いているようだ。

「僕らはミニマルを作ったこともないし、ミニマルなんて全然好きじゃないよ」

「僕らはトラディッショナルなハウス・ミュージックとテクノを聴いて育ったんだ」

> Interview & Introduction : Jonty Skrufff (Skrufff.com) _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency)

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Skrufff (Jonty Skrufff) : ‘Rej’ はクラブでも長い間プレイされ続けていますし、コンピレーションにも多数収録されていますね。今になって楽曲が正式にリリースされることに対してどう思われますか?

Ame (Kristian) : この楽曲は今から一年前にリリースされているんだ。Defected は僕らのレーベルから許可を受けているだけの話で、あのレコードは今までにすでに2万枚も売れてるんだよ。だから今回が初のリリースというわけじゃないんだけど、Defected からリリースされることで、幅広い客層に注目されそうだね。

Skrufff : リリースから12ヶ月経った今でもこの楽曲に対して熱狂的な思いでいられますか?

Ame : プレイすることに飽きてはいないんだ。何年も曲を作ってきたけど、大勢のリスナーに聴いてもらえるようなヒットになったのはこの曲が初めてだったからね。僕自身もこの曲が大好きなんだ。時間を感じさせない魅力があると思う。そうであって欲しいと思うよ。だからこの曲をプレイするのにも飽きないんだ。

Skrufff : メジャー・シーンで成功をすることで人生は変わりましたか?

Ame : 僕たちは2人とも DJ をしていて、今までも結構な数のギグに出ていたけど、前と変わったことと言えば、大規模なフェスティヴァルや大きなクラブでプレイするようになったことかな。でも人間としては何も変わってないよ。今でも昔と同じような考え方をしてるしね。

Skrufff : 大きなクラブやフェスティヴァルでプレイする時、通常より大きなプレッシャーを感じますか?

Ame : いいや、全然。通常と変わらない音楽をプレイしてるからね。確かに、フェスティヴァルで4千人を目の前にプレイするときはデトロイト・テクノを多めにプレイするとかそういった違いは多少あるかもしれないけど、いつでも自分の好きな音楽だけをプレイするようにしてるんだ。だからプレッシャーを感じることもないというわけさ。

Skrufff : このヒットによって Sonar Kollektiv にはどんな影響がありましたか?

Ame : この曲がこんなにヒットするとは彼らも予想していなかったんだと思うよ。彼らとはいい関係が保ててるけど、もうレーベルには所属していないんだ。トラブルがあったとかじゃないんだけど、自分たちのレーベル Innervisions を始めて、今はそれを会社として運営してるのさ

Skrufff : 数日間寝ないで DJ するのが好きなタイプですか?

Ame : 僕はもう少し節度のある人間だよ。8時間くらいプレイするのは好きだけど、僕はレイバーじゃないんだ。

Skrufff : でも、昔はレイバーでしたよね?

Ame : 10年前はそうだったと言えるかもね。でもそういう時期は誰にでもあるし、ある時期を過ぎたらレイブにも行かなくなったよ

Ame Interview

Skrufff : あなたは Karlsruhe にお住まいですが、そこで生まれ育ったんですか?

Ame : 僕は Manheim 出身だよ。Karlsruhe からそう遠くない町だけどね。Frank は Karlsruhe の出身なんだ。

Skrufff : ベルリンに移住したいと思われることはありますか?

Ame : 友達には誘われるんだけどね。ベルリンは好きだよ。でも過ごすんだったら数日間の間だけかな。そのあとはやっぱり帰りたくなっちゃうんだ。パーティーやナイトライフが充実しすぎてるんだよね。パーティーに行こうと思えば毎日でも行けるんだ。だから時間が過ぎるのもすごく早いし。そういう生活はしたくないんだ。だからやっぱり地元がいいな。友達もみんなここにいるしね。

Skrufff : 地元ではセレブだと思われているんでしょうか?

Ame : 多分そうかもしれないね。でも僕は地元でレコード・ショップを運営してるし、地元の新聞に記事を提供していたりするんだ。だから人には知られてるけど、セレブ呼ばわりされたりはしないかな。

Skrufff : レコード・ショップを運営されているとのことですが、最近のレコード・マーケットについてはどう思われているんでしょうか?

Ame : 最近のレコード・ショップはコレクターやレコードが好きな人のために存在してると思うんだ。僕たちの住むエリアにはきちんとした DJ カルチャーが根付いてるから、まだまだたくさんの人がレコードを買っていくよ。僕はレコードが好きだからレコードしか置かないんだ。ショップは続けて行くつもりだよ。僕自身がアナログ中毒だし、レコードを買うのが好きだからね。

Skrufff : レコードは何枚くらいお持ちですか?

Ame : 1万枚以上はあるね。

Skrufff : ジャンル別に並べていますか?それともアルファベット順ですか?

Ame : レコードは都市やエリアごとに集めてるんだ。例えばデトロイトやニューヨーク、UK やフランス といった具合にね。

Skrufff : UK マーケットを制覇することはどのくらい重要だと思われますか?

Ame : UK のマーケットは僕らにとって一番重要だと言えるだろうね。2年ほど前から一ヶ月に数回はコンスタントにイギリスでプレイしているんだ。はじめは小さいクラブでプレイしていたけど、今は大きめのクラブでプレイすることも多いよ。ただ、オーガナイザーやクラブのオーナーと仲がいいから、今でも数年前に回していたような小さなクラブでもプレイしているんだ。なぜかは分からないけど、僕らにとって UK はベストなマーケットなのさ。僕は特にスコットランドとアイルランドが好きだね。

Skrufff : アメリカのマーケットをどのくらい重要視されていますか?

Ame : アメリカには本当のクラブ・シーンがないというのが僕の意見かな。何回かプレイしたことはあるし、12月にはまたニューヨークに行くけど、アメリカにはクラブ・シーンがなくなってしまったんだ。シーンがないから、アメリカのDJ は、自分の国で DJ するより、ヨーロッパや日本、オーストラリアにツアーに出ることが多いのさ。アメリカから生まれてくる音楽はあっても、いいクラブはないね。

Skrufff : ご自身はミニマル・シーンに属していると思われますか?

Ame:いいや、全然。僕らのバック・グラウンドはトラディッショナルなハウス・ミュージックとテクノだけど、多分 ’Rej’ の音はモダンだったんだろうね。このトラックは Louis Vegas や Francois K. 、Timmy Regisford といったアメリカの大御所 DJ にも、Richie Hawtin といったミニマル系の DJ にも支持されているけど、僕らは一度もミニマルを作ったことがないし、好きでもないんだ。

Skrufff : なぜミニマルはこんなに人気なのでしょうか?

Ame : 何でだろうね。今流行りのドラッグと合う音楽だからじゃないかな。僕もミニマル系のパーティーでプレイすることが結構あって、 Luciano のトラックは好きでプレイしてるよ。Ricardo より Luciano の方が好きなんだ。僕はミニマル系のパーティーでも所謂ミニマル系のトラックは2曲以上回さないようにしてるんだ。それでもちゃんとしたセットになるからね。一度Ricardo の5時間セットを観に行ったことがあったんだけど、僕にしてみれば何の変化もない音楽なのに、周りの人はずっと踊り続けてるんだ。ドイツではそういう音楽のことをケタミン・ミュージックって呼んでるんだよ。

Skrufff : ドイツのシーンとミニマルには特別な関係があると思いますか?ベルリンはミニマルの発祥の地として知られていますが…

Ame : ベルリンの人でさえ、みんなミニマルに飽き始めてるんだ。ミニマル・シーンで有名な友達の Steve Bug もPerlon の連中も、正直ミニマルには飽き飽きだって言ってるしね。ミニマルはベルリンで火が付いた音だけど、そのベルリンの人々が飽きてきているってことは、これから数ヵ月後には何か大きな変化が起こるってことだと思うよ。ミニマルの人気は下降して、その代わりに新しい音が生まれてくると思うんだ。どんな音楽かは分からないけど、多分ハウスかな?こういった流行のジャンルは、2〜3年で消える運命にあって、そのジャンルでもトップの人間だけが生き残る仕組みになっているんだ。例えば、Luciano とか Richie Hawtin なんかはブームが起こる前から何年もシーンで活躍してたんだ。今でさえみんなミニマルをプレイしてるけど、5年前は誰も興味がなかったんだから。

Ame の ‘Rej’ は Defected から発売中

End of the interview


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