HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Alex Smoke Interview


「突然目の前にやってきて、汚い言葉を吐くやつなんてほとんどいないだろ?その代わりにみんな『あの新しいトラック好きだよ』とか『君のアルバムよく聴いてるよ』、『君の髪型好きだよ』って褒めてくれるわけさ。そうすると、完璧にゆがんだ自分自身のイメージが簡単に出来上がってしまう。それを受け入れてしまえば、どんどんエゴが大きくなって、アンバランスになって、最終的には嫌な奴になってしまうのさ」

スコットランドの名門レーベル Soma のアーティスト Alex Smoke は、今日のクラブ・シーンにおいて最も早いスピードで急成長を果たしたライジング・スターの一人だと言えるだろう。しかし、インタビューの中で今日のセレブ・カルチャーに対する意見を述べる彼は、彼自身が求めているのは名声ではないと話す。

「僕自身、そういう嫌な奴にならないように常に気をつけているし、名声を得ることなんて、僕には魅力的でも何でもないんだ。正直言って、無名でいる方がいいな」

現在24歳。グラスコー出身のAlex Menzies (a.k.a. Smoke) が初めてシーンに衝撃を与えたのは、Soma からリリースされたエクスペリメンタルなダウンビート系デビュー・アルバム "Incommunicado" だった。その時点ですでにミニマルというカテゴリーからは距離を置いていた彼だが、最近になって、ミニマルに再びハマっていた自分に気づいたと言う。

「去年は世間で"ミニマル"と呼ばれている楽曲をよく聴いてたね。プレイした楽曲も多少はあったよ。今はしてないけどね。最近ではまたエレクトロやテクノを中心に回してるんだ」

「ライヴや DJ をする時は、フロア向けのスタイルでプレイするんだ。例えば、ダウンテンポ系のトラックをプレイしたりはしないってこと。緊張しちゃうからね。ダウンテンポをプレイしても、クラウドは反応してくれないってことは今までの経験から学んできたんだ」

「違ったジャンルをプレイして、セットに面白みを出そうとはするけど、曲のテンポに関しては一定の範囲内に制限してるんだ。120〜135bpmまでのトラックならOKという感じにね」

以下は対談形式でのインタビューの模様をお伝えする
(Translation by Kei Tajima)

Skrufff (Jonty Skrufff) : あなたのニュー・アルバムのタイトル "Paradolia" には、「偶然生まれる論理的なイメージを創造的に知覚することの出来る人間の能力」という意味があるそうですが、どのようにしてこの言葉を知ったのですか?

Alex Smoke : 全くの偶然さ。ある日テレビ番組を観てたらこの言葉が出てきて、どんな意味があるのか説明してたんだけど、それがアルバムの内容をかなり上手く要約していたというわけ。その時点で違うタイトルを付けてはいたんだけど、"Paradolia" に変更したんだ。

Skrufff : 僕も Google で Paradolia を検索してみたんです。ある定義によると "インクのしみのような模様"ということでしたが、同時に聖母マリアのイメージもたくさん出てきました。そんなイメージを見ていて、あなたがダ・ヴィンチ・コードのファンかもしれないという疑問が頭を過ぎったのですが…?

Alex Smoke : その本は読んでないんだけど、そういった問題をめぐるオカルトの文書は結構読んできたよ。テンプル騎士団に関する本とかね。もちろん Alasteir Crowley の本もたくさん読んだし、カバラに関する本なんかも読んだしね。

Skrufff : マジックを信じますか?

Alex Smoke : 複雑な問題だよ。僕からすれば、みんな同じで、ただアプローチの仕方が違うだけなのにね。例えば、ヒンドゥー教の神秘主義や儀式上の魔法、カバラ といったものは、すべて異なった方法のようで、みんな同じゴールを目指しているんだ。マジックという言葉は、表現上空想的に聞こえるけど、実はすごく主観的なのさ。

Skrufff : 曲作りをしていると、エネルギーの源になったような感覚を覚えることがありますか?

Alex Smoke : クラブで楽しんでる夜はね(笑)。そんな風に感じることはめったにないけど、曲をつくっている時、強いコネクションを感じることもあるよ。そうすると、集中できていい曲が作れるんだ。

Alex Smoke Interview

Skrufff : ここ12ヶ月で急激に忙しくなられましたが、曲作りとDJのバランスをどのように保っているのですか?

Alex Smoke : やることが多すぎて、最近ではどんどんだらしなくなってるね。ただ、曲作りは楽しいからきちんと睡眠がとれて、クレイジーな生活をしていなければ続けられるよ。

Skrufff : この12ヶ月間で、急激にシーンのトップに登りつめ、Alex Smoke として世界各国でブッキングされるようになったわけですが、周りのDJから嫌がらせを受けたことはありますか?特に海外に行く時など、嫉妬されたりしましたか?

Alex Smoke : 僕が普段一緒に回してる DJ は、彼らのセットの中でベストを尽くしてメインを引き立ててくれるんだけど、僕の出る前にレジデントDJにすごいトラックをプレイされた時も何回かあったよ。例えば、まだ11時半なのに Joey Beltram の 'Energy Flash' や Rolando の 'Knights of the Jaguar' とかね。「おいおい、落ち着けよ(笑)」って感じ。

大体の人は、ちゃんと考えてくれるけどね。僕さえリラックスしていれば、そういった事態が起こっても対応できるんだ。ただ、飛行機を降りて直接クラブに行ったりすると、気持ちを集中させることが出来なくて、ひどいプレイをしてしまう時もあってね。嫌なんだ。気分を切り替える時間が必要なのさ。ビールを飲んで、リラックスしたいんだ。

Skrufff : セット前に入念に準備しますか?

Alex Smoke : いや、全然。ただレコードをたくさん持っていって、後は祈るのみ。レコードはたくさん持っていけるほうが良いんだ。選択肢が広がるからね。アナログで買えないトラックや、まだプレスされていない僕のトラック数曲を除いては、ほとんどアナログを使ってプレイしてるよ。僕はオールド・スクールな奴なんだ。

Skrufff : 'Prima Materia' という楽曲からは、クラシック音楽の要素が大きく感じられますね。あなたは小さい頃からクラシック音楽の教育を受けてこられたそうですが、現在でも興味を持たれているんですか?

Alex Smoke : オーケストラを観に行ったりする程ではないけどね。でも僕の母親はプロのミュージシャンだし、兄弟は二人とも楽器を演奏してるんだ。

Skrufff : あなたのバイオグラフィーには、「週末は常に DJ のブッキングが入っていて、なかなか友達に会うことが出来ない」と書いてありましたが、友人はあなたの成功についてどのように思っているのでしょうか?

Alex Smoke : みんなすごく協力的だし、僕が成功していることに対して嬉しく思ってくれているはずだよ。最近では、それが問題になったこともあったけどね。というのも、週末はいつも海外にツアーに出ているし、平日でもなかなか会うチャンスがないから、ちょっと変な感じになってしまったんだ。その間に何人かの友達もグラスゴーを離れたりして、ちょうどコンタクトを失ってしまうように感じたんじゃないかな。今年は可能な限り休みが取れればと思ってるよ。

Skrufff : あなたの友達も音楽関係の仕事をしているのですか?

Alex Smoke : いいや。ほとんどが普通の仕事をしてるよ。お店で働いたり、ウィスキー蒸留所のマーケティング部だったりね。いろいろさ。

Skrufff : 以前のインタビューで、あなたが当時付き合っていた彼女の父親に、「酒を飲まず、サッカーが好きでないという理由から家を追い出された」と話されていましたが、彼はあなたの最近の成功についてどう思っているのでしょうか?

Alex Smoke : 彼女とはもう付き合ってないんだ。彼女の両親に別れさせられてね。実際、それから一回も会ってないんだ。今は新しい彼女が出来たけど、彼女の両親にはまだ会ってないんだ。まだ数週間しか付き合ってないからね。

Skrufff : DJ magazine を読みましたよ。最近では以前よりお酒を飲んでいるそうですね。

Alex Smoke : そうだね。完璧な酔っ払いだよ。若い時はお酒を飲むと気持ち悪くなってしまって、お酒もあまり楽しめなかったんだ。でも年をとると飲む、飲まないに関わらず不思議と許容量が増えるものでね。以前はたった3パイント飲んだだけで気持ち悪くなっていたのに、今は平気なんだ。グラスゴーに住んでいて、飲まないなんて出来ないよ。飲むことはここのライフ・スタイルの一部なのさ。実際、お酒をエンジョイできるようになって、すごく嬉しいんだ。ただ、海外でDJする時は気を付けなきゃいけないけどね。常にお酒をおごってもらえるから、それに慣れてしまうのさ。

Skrufff : 海外でロック・スターのような経験はしましたか?例えばスイート・ルームとか。

Alex Smoke : いや、ないかな(笑)何回かいいホテルには泊まったよ。ツアーに出ているときは、結構お行儀が良いんだ。ベロベロになってプロモーターの彼女を狙おうとするようなことはしないよ。

Alex Smoke Interview

Skrufff : あなたのレーベル Somaのボスであり、Slam の Orde によると、Soma のスタッフの半分がグラスゴー周辺で喧嘩に巻き込まれたことがあるそうです。あなたの周りではどうですか?

Alex Smoke : まぁ、驚きはしないよね。ただ、グラスゴーは巷で言われているほど危険な場所じゃないよ。南側はかなり治安が悪くて、ゴーバルズなんかを夜中に歩いていれば、嫌でも喧嘩に巻き込まれるだろうね。でもどの都市だって同じさ。僕も何回か危ない目に遭ったことがあるよ。酔っ払った奴に理由もなく道端で顔を殴られたりね。これは4年前に一度だけ起こったんだ。あれはイースターの週末だったかな。ただ道を歩いてたんだ。そうしたらある男が彼の友人と道中に立っていた。酔っ払ってね。覚えてるのは、その男に何をしてるのかと聞いたら、顔を殴られて、足を捻挫して逃げたということさ。

Skrufff : DJ Magazine に「ロンドンは嫌な奴ばかりだから住めない」と話していましたが…

Alex Smoke : そうだね(笑)ロンドンには兄弟が住んでるし、僕もロンドンで生まれたんだ。友達もたくさん住んでるから、ロンドンは大好きだよ。

Skrufff : ロンドンにはグラスゴーより嫌な奴が多くいると思いますか?

Alex Smoke : 何の疑いもないね。間違いない事実だよ。ロンドンに住む人は、そこで何かを成し遂げなきゃならないと精一杯なんだ。だからすごく押しが強くなっちゃうんだよね。だから、そういう人たちと話をしていると、常に「それより、これ僕の CD なんだ。聴いてみてよ」ってことになるのさ。ロンドンではそういうセリフを耳にすることがすごく多いよ。もしくは、「これは僕と友達がやった DJ ミックスなんだけど、聴いてみて。結構いいよ」 とかね。僕は、自分がいかに素晴らしいかを人にアピールする奴が嫌いなんだ。ただ、それは夢を追いかけてロンドンにやってきた人のことだけかもしれないね。彼らは一般の人より、ちょっと押しが強いってだけかもしれない。

End of the interview

Alex Smoke のニュー・アルバム Paradolia は Soma Records から発売中


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