HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

’70年代からイギリスを拠点に活動し、 Prince Far I、 Bim Sherman、 The Roots Radics Lee "Scratch" Perry といったビッグ・アーティストまでもが活躍するレーベル On-U Sound の主宰者としても知られるダブ・エクスペリメンタル界の奇才 Adrian Sherwood が今年の10月にも来日を果たした。今回も レゲエ / ダブをベースにしながらも、テクノからダウンビート、ドラムン・ベースまでをも縦横無尽に操るマジシャンの様なサウンドを聴かせてくれた彼だが、今回の来日のタイミングで遂に HigherFrequency もインタビューを決行。生ける伝説とも言われる彼が’70年代から現在までに成し遂げてきたことや、楽曲制作での姿勢、 On-U Sound も開始したデジタル・ダウンロードのシーンについてなどを訊くことに成功した。

Interview : Ryo Tsutsui (HigherFrequency) _ Len Iima (HigherFrequency) _ Introduction : Masanori Matsuo (HigherFrequency)

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HRFQ : ここ数年、かかさず来日公演を果たしていますが、日本の印象はどうですか?

Adrian Sherwood : 僕は1984年から何度も日本に来ているんだ。僕は日本に対してリアルに親近感を感じていて、様々な場所を見て回っているし、休暇を日本で過ごしたこともある。友人も沢山いるし、日本でファンを獲得する努力も惜しまずやってきた。できるだけ毎年日本に来るようにしているし、来るたびにまた来れたことに非常に感謝するんだ。

HRFQ : プロデューサーやDJとして長いキャリアをお持ちですが、最初からこんなに長い経歴を積んで行けると思っていましたか?

Adrian Sherwood : まあDJとライブのダブショウは始めてからまだ7,8年しか経っていないんだ。その前は生のバンドのダブミックスをやっていた。African Head Charge や Dub Syndicate, Gary Clail, Tackhead, Mark Stewart, Maffia といったバンドや ON-U にかかわる様々なバンドだね。キャリアに関してはサバイブすることしか考えていなかったよ。レコードが間違いなくいいサウンドになっていること、自分ならではのサウンドを持っていること、そして才能あるいい人々とともに仕事すること、そんなことを考えてきた。

HRFQ : 楽曲を作る際、プレッシャーを感じたりすることはありますか?

Adrian Sherwood : プレッシャーを感じるときというのは誰かのために仕事をするときかな。自分のお金で自分のためにレコードを作るときにプレッシャーは感じないんだ。もし誰かのキャリアやお金の責任をしょっているときはそれがいいほうに働くこともあるし、逆もある。まあ基本的には人のための作業でなければプレッシャーは感じないよ、それに人のためであっても上手くいくぶんにはそれはいつも光栄なこととなるしね。もともと僕にとってスタジオに行くことは常に喜びだったし、仕事にいくという感覚じゃなかった。むしろ僕がプレッシャーを感じるのは他の人がパニクっていたり、心配していたりするのを見るときで自分も心配になってきてしまうんだ。

HRFQ : 楽曲を制作される際、どういったタイミングで「これで終わりにしよう!」と見切りを付けられるのですか?

Adrian Sherwood : 僕は作品に対して満足するということがほとんどないんだ。自分の作業に満足して、ミックスにも納得がいけたようなことって今までのキャリアの中でもせいぜい30回とかその程度しかないと思う。でも基本的にはオーバープロデュースにならないようにということはいつも意識している。手を加えすぎるとかえってその曲をだめにしてしまうからね。だから自分が本能的にいいと思うかどうかを判断基準にしている。まあ基本的に周囲のアーティストやなんかとやり取りしながら仕上げていくから基本的にはチームワークなんだけどね。でも僕は他のプロデューサーと違って作りこみすぎないということをいつも意識しているから、僕のサウンドの多くは未完成みたいに聴こえるのさ。とにかく大切なのは自分の本能にしたがうこと、好きだと思ったらそこが完成さ。

HRFQ : あなたは’70年代からシーンの第一線で活躍してこられてきましたが、当時と比べて現在の音楽シーン、得にダブ・サウンドについてどのような印象を受けていますか?

Adrian Sherwood : 僕が若いころスタートしたとき、すべてがライブ・ミュージックだったんだよね。ドラムマシーンなんて一般的じゃなかった。でも今は日本でもイギリスでも、ほとんどどこだってラジオでかかっているほとんどの音楽でドラムマシーンが使われてるんだ。それに違うなと思うのは、今は誰でも自分のラップトップにスタジオを持ってるってことかな。昔はほとんどの人がスタジオにいくことすらできなかったけど、今は皆が自分の寝室にスタジオを持ってる。それは大きな違いだと思うよ。今は誰でも音楽を作っていて、そのこと自体はいいことなんだけど、同じプラグインを使った同じようなサウンドになりやすいということはあるよね。昔は皆、人と違うサウンドを誇っていたものだったよね、 Lee Perry は聴いただけでそのサウンドだとわかるし、僕も自分のサウンドを求める過程で彼のサウンドを一生懸命にコピーしようとしたよ。そうして今では僕なりのサウンドを獲得したと思っている。自分のサウンドがあれば生き残ることができると思うんだ。最近でもいいアーティストはサウンドを認識できるよね、 Digital Mystics とかみたいに。でもホームレコーディングのシステムだけだと他から突き抜けるのは難しいと思うよ。

HRFQ : あなたはパンクとルーツレゲエの融合を成し遂げたパイオニアとして認識されていますが、当時意識的に両者を融合させていたんですか?

Adrian Sherwood : 意識していたのは生き残ること、好きで自分にとって興味深いと思えることをやることだけだね。特に初期のころはあまり何かきちんとしたプランを立てたりすることはなかったよ。最初のレコードは単純に楽しみのために作ったんだ。自分の音楽に注目が集まるにつれてビジネスライクになっていったんだけどさ。ただ最初はとにかくエキサイティングで新鮮で、状況的にもラッキーだったのは僕はスタジオを持っていて、色々な人が来てオーバーダビングしてくれたおかげで自然と進歩していったんだ。色々な影響を受けたよ。健康的な発展だったと思う。アルバムの New Age Steppers を作ったとき、僕は本当に多くのすばらしいミュージシャンとコンタクトが取れたし、皆スタジオに来たがっていたんだから。

HRFQ : あなたのレーベル On-U Sound が、弊社サイト hrfq でも配信を開始しました。現在賑わいをみせているデジタル・ダウンロードのマーケットについてはどう思われますか?

Adrian Sherwood : 今はまだはっきりしていない感じだと思う。ビルドアップしてきているけど今はまだ慎重に捉えてるよ。ただ将来的にははっきりと伸びていくと思っているし、今後どんどん良くなっていくだろうね。だからどう伸びていくのか様子をうかがっているんだ。

HRFQ : あなたはミュージシャンとしてすでに多くのことを成し遂げてこられましたが、次はどのようなことを成し遂げたいですか?

Adrian Sherwood : とにかく動き続けることかな、今はロンドンでダブステップの人たちとともに作業をしているし、イギリスの古い歌をコンパイルしたフォークアルバムを終えたばかりだしね。ちょっと変な感じだったけどそれが他と違うということだよ。それに1990年以来はじめて担当する新しい Lee Perry のアルバムも終わりに差し掛かっているところだし、 Harry Beckett とともに作っているニューアルバムもある。これは dancehall meets jazz, reggae, といった感じでとても興味深いレコードだよ。そのほかにも最近 Mark Stewart や Primal Scream, Asian Dub Foundation のレコーディングもしたし、African Head Charge の楽曲も数曲抱えている。結構忙しくしているよ。

End of the interview



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