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James Blake

INTERVIEW

James Blake

  • Text & Interview : Yoshiharu Kobayashi

  • 2011.7.15

  • CDJ-2000NXS2 DJM-900NXS2

現在のところ、アンダーグラウンドのベースミュージック・シーンが誇る最大のアイコンと言えば、このJames Blakeを置いて他にいないだろう。昨年は、ダブステップとR&Bを接合した“CMYK”を筆頭に、数々のクラブ・アンセムを投下。そして、今年に入ってからリリースした1srtアルバム『James Blake』は、本国イギリスで最高9位を記録し、ここ日本でもベースミュージックの作品としては異例の大ヒットを記録している。

 

おそらく、彼の作品がここまで受け入れられたのは、このアルバムから本格的に前面へと押し出されることになった「歌」の力が大きいのだろう。ヒンヤリとしたダブステップ以降のサウンドに乗せ、深い悲しみを内に秘めた歌声を聴かせる本作は、言ってみれば、ダブステップ時代のシンガーソングライター・アルバムだ。この作品は、深夜のダンスフロアで熱狂しながら聴くよりも、真冬の寒空の下、誰もいない公園を一人で散歩しながら――あるいは、真夜中に自分の部屋でベッドにうずくまり、ヘッドホンをしながら聴き入るのが相応しい。

 

そして、だからこそ、このアルバムの楽曲群が、ライヴという「大勢で音楽をシェアする場」でどのような効果を発揮することになるのか、非常に興味深いところである。10月に決定している来日ツアーは、発売後すぐに東京公演がソールドアウトになるほどの注目を集めているが、そこで早くその答えを確かめてみたい。

 

 

ーーアルバムがリリースされてから数ヶ月が経ちましたが、世間からの反応についてはどう受け止めていますか?

 

James Blake:そうだね……初期の頃はセット中にアルバムの曲を入れても、観客は楽しんではいるけど、何の曲か認識していない感じだった。でも、今はアルバムの曲をかけたり演奏したりすれば、曲の始まりから物凄いノリの良いリアクションが返ってくるんだ。他のアーティストでも似たような現象が起きるのを見てきたけど、実際に自分でも体験してみて、改めてアルバムの影響力には納得させられたよ。嬉しいものだね。

 

 

ーーHigherFrequencyでは初めてのインタヴューとなりますので、基本的なところも訊かせてください。あなたは幼い頃からピアノを習っていましたが、それが音楽を作る上で今でも役に立っているところはあると思いますか?

 

James Blake:ピアノを弾く人は音楽を理論的に解釈するから、確かにそういう意味では僕の曲作りに影響を与えているね。感情表現豊かな楽器なんだけど、(理論的なのは)ピアノの形態にも関係しているんだろうな。(ピアノ的な思考は)プロデューサー業にとても適しているよ。頭の中が鍵盤になっているから、その分、作業が速いんだ。ピアノを弾けるプロデューサーは有利だね。僕の音楽性、ハーモニックスの感覚は完全にピアノからきていると思う。

 

 

ーー幼少時から音楽の勉強をしていたあなたですが、ダブステップに出会ったのは、ロンドンのPlastic Peopleで開催されている『FWD>>』というパーティーだったんですよね?

 

James Blake:そう、当時まだ僕は19歳だったんだけど、音楽によって別世界へと引き込まれるような感覚に魅力を感じてね。あの手の音楽を聴くと、当時味わっていた感覚が蘇ってくるよ。聴いていて自分の世界に入り込んでしまうような……あの頃はそんな感覚が大好きだった。僕はダブステップで初めてひとつのシーンに足を踏み入れたんだと思う。それまではどのシーンにも属していなかったんだよ。バンドには特に興味なかったし、イメージ重視で特定の音楽を聴くこともなかった。でもダブステップと巡り合ったことで、音楽性だけでなくダブステップを聴いている人たちともすごく共感できてね。いろんな人と出会って、ダブステップのカルチャー全体に興味を持ったんだ。

 

 

ーーダブステップと出会う前には、どんな音楽に夢中になっていたのですか? やはりピアノ曲が多かったのでしょうか?

 

James Blake:そうだね、ピアノを使った楽曲とか、Sam Kooke、Arlo Guthrie、Joni Mitchell……う~ん、他にどんなのがあったかな(苦笑)。惹かれた点は、しっかりとしたメロディ。僕はまずヴォーカルに惹かれるんだ。プロダクションとかコード進行とかは二の次で。もちろんそれらが重要じゃないっていうことじゃなくて、ただ僕が音楽を聴くときの最優先ではないってことなんだ。

 

 

 

ーー“CMYK”やHarmonimix名義でのリミックスを聴けば明らかなように、あなたの音楽を語る時はR&Bの影響も欠かせません。こういった音楽には、いつ頃から親しんできたのですか?

 

James Blake:言われてみれば、初めて買ったアルバムがDestiny’s Childの『The Writing’s On The Wall』だったな。13、14歳ぐらいのときだったと思うよ。けど、そのアルバムは例外で、基本的にはR&Bを意識的に聴いたことはないんだ。メインストリーム音楽でテレビでもよくかかっていたから、BGMとして僕の人生に薄く流れていた感じだね。ただ昔からヴォーカリストに惹かれたから、アーティスト単位では聴いていたよ。R.Kellyは凄く好き。素晴らしい声の持ち主だから、彼からの影響はあると思う。

 

 

 

ーーヴォーカリストが好きということですが、アルバムを聴いて驚かされたのは、これまでのシングルやEPと較べると、歌の存在感が大きく増していることです。やはり、これはアルバムを作る上で重要なことの一つだったのでしょうか?

 

James Blake:確かにそれはとても重要だったね。父の一言が頭から離れなかったんだ。僕の父も、自分の作品をセルフプロデュースしているからね(※父親は英プログレ・シーンで活躍したJames Litherland)。ヴォーカル入りの曲を聴いてもらって、ヴォーカル・ミックスダウンのアドバイスをもらったんだ。「ヴォーカルをもっと上げるべきだ。フワフワ浮遊している感じを出した方が良い」って言われたのが心に強く残ったな。それからミックスでヴォーカルが前面に出るようにしたおかげで、耳元でささやかれているような効果を出すことができたと思う。凄く気に入っているよ。

 

 

ーーあなたのヴォーカルは激しく変調させたものが多いですが、その理由は何でしょうか? 既存のヴォーカル・エフェクトとは違う新しいことをやりたいという冒険心なのか、それとも自分の声をそのまま出すことに何かしらのためらい、躊躇があるということですか?

 

James Blake:曲作りを始めたばかりのころ、自信がなかったのは自分の声ではなく、実は歌詞の方だったんだ。普通の書きものに関しては自信を持ってたよ。ただそれを歌うために歌詞に変換するプロセスに慣れていなくて。アルバム制作をきっかけに初めて挑戦したことだからね。だから、ためらっていたのはヴォーカルではなく、歌詞だったんだよ。皮肉なことに、最終的にはその歌詞をアルバムのアートワークに入れることになってしまったけど。そう、開き直ったんだ(笑)。

 

 

ーーこれまでのシングルやEPと較べると、このアルバムは、ダンスフロアで大勢の人が熱狂してシェアする音楽と言うよりも、リスナーと1対1で向き合い、心の深いところに触れてくるようなところが強い音楽だとも感じました。

 

James Blake:同感だよ。ダンスフロアで人が熱狂するような音は他で作っている。でもこのアルバムでは、そういう方向性を目指していなかったんだ。決して悪いことではないけど、ダンスフロア用の曲はダンスフロア以外の場面では想像力的に限界がある。それに、ダンスフロア的な曲を書く気分じゃなかったし。ヴォーカル入りの曲の場合、自分自身が歌うとなると、感情を溢れ出させたいし、それには感情が張りつめていないとできない。自分を正確に表している、意味深い歌詞を書く必要があるんだ。そういう曲は感情的に張りつめている場合が多いから、ダンスフロア向けではないよね。だから、自然にこういった作品になったんだよ。

 

 

ーーあなたの音楽からは、1人でポツンと佇んでいるような孤独が感じられます。それはどこから生まれていると思いますか?

 

James Blake:1人でいる時間が多いからじゃないかな。一人っ子だし……すごく結束の固い仲間は昔からいるけど、一人っ子は孤独感に包まれているものなんだ。子供の頃は街の外れで育ったし、そういうことの組み合わせが孤独なサウンドを生み出すのかもしれない。なぜだかわからないけれど……でも実はハッピーな人間なんだよ(笑)。暗くて陰気な奴なんかじゃない。あのアルバムには不思議と孤独感の中にも希望の光が見え隠れする。それって自分の幼年期と重なるかな。

 

 

ーーこのアルバムには子供の頃の思い出も刻まれていると?

 

James Blake:そうだね、学校に通っていた頃、子供のころに起こったことの体験がこのアルバムには刻まれている。このアルバムは自分にとって自伝的な作品なんだ。子供の頃の体験について触れている曲がいくつかあって、それ以降、自分で考えたり、人に伝えたいこと、曲にしたい出来事がありすぎて、だからこそ最新の曲は今までの作風と雰囲気が違う。プロダクション方法はまだ模索している最中だけどね。うん、だけど確かに今作は自伝的なアルバムになっているよ。

 

 

 

ーーもう新曲も書き始めているんですか?

 

James Blake:うん、いつも曲作りはしているから。でも正直に言えば、年に一度のペースでアルバムをリリースしていく気にはあまりなれない。自分には合わないと思う。今までやってきたように、少しずつ12インチやEPをリリースしていくことを考えているよ。次の作品の発表まで1年半も待つのは、なんだかもったいないような気がして。多くの人が飽きてしまうと思うんだ。もちろん、アルバムのことは誇りに思っているよ。でもあの作品はその時期の自分を表しているもので、僕自身はそれから既に変化している。最近のライヴでは、あの時の自分、あの時の曲との再会を果たして、追体験をしている感じなんだ。新鮮な体験だよ。

 

 

ーーなるほど、10月の来日公演も楽しみにしています。ところで、今あなたがもっとも注目しているクラブシーンのプロデューサーは誰ですか?

 

James Blake:Blawanだね。〈Hessle Audio〉や〈R&S〉と契約している。それからMount Kimbie。彼らは音楽的才能に溢れている集団だよ。Malaも大好きだね。彼らがSkreamと共にダブステップを発明した人たちだから、聴いてみる価値があるよ。斬新な音楽を作っているし、シーンの中でいまだに1番面白いと思う。

 

 

ーーMount Kimbieや The XXとは、実際に交流も深いようですね。

 

James Blake:うん、彼らとは個人的にシェアするものがあるんだ。Jamie(The XX のメンバー)とは凄く気が合うんだよ。人間として素敵な人だし、プロデューサーとしても素晴らしい。彼の作品は大好きで、DJセットでよく使うんだ。そういう意味では、彼らと音楽的にもシェアするものはあるんだろうな。僕が持つアーティストとの繋がりって、友情から生まれたものが多いんだよ。全員に幸運を祈ってる。The XXのアルバムは大好きだし、音楽的な繋がりを感じるという点でもシェアするものがあると思う。

 

 

ーーでは最後に、あなたは本作がリスナーにどのように受け止められることを望みますか?

 

James Blake :音楽が持つ自由な気持ちを体験してほしいね。このアルバムには、かなり不思議なサウンドや凝った作りのサウンドが含まれている。それでも聴く人が共感できる作品であれば嬉しいよ。もしかしたらアルバムに馴染めるようになるまで時間がかかるかもしれないけど、ヴォーカルにつられて引き込まれるかもしれないし。実は僕自身、ヴォーカルに助けられて曲全体のプロダクションが決まったようなところがあるんだ。だからリスナーも同じようなとっかかりでアルバムを聴いてもらえるかもね。でもやっぱり、何より曲を感じてほしいな。

 

 

End of interview

 

 

 

 

リリース情報

 

James Blake jk

James Blake

『James Blake』

Release date: Now On Sale

Label: Universal/Polydor

Cat No.: UICP-1126

Price: ¥2500(Tax Incl.)

Pioneer DJ

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