HigherFrequency ハイヤーフリケンシー

A Guy Called Gerald

INTERVIEW

A Guy Called Gerald

  • Interview : Megan MannTranslation & Introduction : H.Nakamura

  • 2003.12.11

  • CDJ-2000NXS2 DJM-900NXS2

2003年6月末に来日し、その長いキャリアに裏打ちされたプレイで東京のクラウドに衝撃を与えたダンスミュージック・カルチャーの重鎮中の重鎮、A Guy Called Geraldのロングインタビューに、HigherFrequencyのUKコンタクトであるMegan Mannが成功した。UKアシッド・ハウス隆盛期の80年代後半にはあの808 Stateに在籍し、ソロに転じてからもアシッド・アンセムのひとつである「Voodoo Ray」や、Drum and Bassの地平線を切り開いた「28 Gun Bad Boy」をリリースするなど、常にダンスミュージックの新たなジャンルの開拓者としてトップを走り続けてきたA Guy Called Gerald。クラブカルチャーを長きに渡って見つめてきた彼の視線は非常に鋭く、辛らつでありながらも的を得た発言が満載のインタビューとなった。その貴重な内容を編集なしの完全版でお届けする。

 

 

――最近ロンドンに戻ってこられたと思いますが、ロンドンでの生活はどんな感じですか?

 

A Guy Called Gerald : ロンドンに戻ってくるまでの5年間はずっとニューヨークに住んでいたから、ここ1年間の生活は今までとは全く違った感じがするね。ロンドンも昔よりずっとイージーな感じになったんじゃないかな。

 

 

――最近の音楽活動については如何ですか?

 

A Guy Called Gerald : まさにノンストップでたくさんの音楽を作っているよ。

HRFQ : それは自分自身の作品?それともコラボレーションですか?

Gerald : 自分の作品だね。基本的に他人の作品には、しばらく関わろうとは思っていないんだ。最近では、Finley QuayeやUrsula Rucker、それに何人かのヴォーカリストのトラック制作に関わったけど、それ以外では余り他人の作品には関わらないように自分に言い聞かせるようにしている。自分自身のためにやらなければならない事がたくさんあるからね。今は、外部のディバイスを使用せずに全てコンピューター内で作業を完結させるやり方を色々と追求しているところで、もしそれが自分なりに納得できた時には、また他の人達との作業をスタートさせる事になるかもしれない。でも、今はソロで活動している事に満足していて、それがベストなやり方だと思っているんだ。なぜなら、今の僕の作業ペースはそんなに速くないからね。まぁ、とにかく今は、色んな事を学んでいる時期かな。

 

 

――2004年のプランはどんな感じですか?!K7レーベルからオリジナル・アルバムが出ると聞きましたが?

 

A Guy Called Gerald : 今まさに作業の真っ最中なんだ。まぁ、準備が出来たらリリースするって感じかな。その他には、僕自身のレーベルであるSugoiから何曲か自分の昔の作品や新譜を出して、レーベルの紹介をしていこうと考えているよ。

 

 

――今、ハマっているサウンドはどんな感じのものですか?コンセプトは何かありますか?

 

A Guy Called Gerald : 出来るだけコンセプトは考えないように努力しているんだ。コンセプトを持つと、それに縛られてしまう事にもなるし、逃げられなくなってしまうからね。だから、クリエイティブな面で言うと、どんなコンセプトでも試してみるって感じかな。それに、音楽制作的な面で言うと、今は「コンセプト」をカチっと作れるほど早いペースで作業を行っていなんだよね。

 

 

A Guy Called Gerald

 

――と言う事は、曲を作り始める時には、特に何かのサウンドをイメージして作るってわけではなく、フィーリングを大切にしているって事ですか?

 

A Guy Called Gerald : まずはマシーンと真剣に格闘してから、それからメロディーを考えて、それを何度も繰り返すって感じかな。先にリズムを考えて、その周辺を埋めて行くスタイルを取る事もあるよ。

 

 

――最近、印象に残ったライブやパーティーはありますか?

 

A Guy Called Gerald : 難しい質問だね。殆どのパーティーはだいたい同じ様な所へ行きついているからね。 まぁ、本当の所を言うと、自分の出演していないパーティーに出かけると、大概は入り口の用心棒に止められてしまったりするんだ(笑)。

 

 

――ロンドンで?

 

A Guy Called Gerald : いや、ホントあちこちでね。

 

 

――(笑)ところで、最近のヨーロッパのダンスミュージック・シーンについてはどう思いますか?

 

A Guy Called Gerald : メディアに殺されているね。そしてその大部分をコントロールしているのがメジャーレコード会社だと思う。勿論、全てのメディアが彼らのコントロール下にあるわけではないし、インディ系のメディアなんかも存在してはいるんだけど、そのインディ系のメディアですら結局はマス・メディアへ情報を提供しているという側面もあったりするから同じ事だと思うんだ。で、DJやDJカルチャーはライブミュージックに影響を与えてきたし、DJのサウンドはライブバンドの音楽なんかより人気があったんだけど、結局そう言ったバンドに大きなお金を投資しているレコード会社が彼らを全面的にプッシュするようになったから、結果として最近になって急にロックの人気が出てきたでしょ。でも僕は、そのロックの人気というものすらも「コントロールされたメディアの中での出来事」かもしれないと考えているんだ。だって、僕の周りにいる人間の中に急にロックに対する考え方を変えた奴もいないし、慌てて鋲の打ってあるレザージャケットを買いにいった奴もいなかったからね。

 

 

――(今、あなたの友人は急にロックに興味を持ったりはしなかったとおっしゃいましたが)、これから本格的に音楽を買い始めるような若い人達はどうですか?やっぱりロックに興味を持っているように思いますか?

 

A Guy Called Gerald : キッズ達はコンピューターに入れ込んでいると思うし、そのうち何人かはコンピューターで自分自身の音楽を作る事にも興味を持っていると思う。実際、作ろうと思えばプレイステーションでも曲は作れるからね。そんな感じで自分たちのやりたい事にのめり込んでいる若い連中を見ると、心から応援したくなるよ。でもロックに興味があるかどうかはわからないな。いずれにしても、ロックがナチュラルな形でポピュラーになったとは思わないし、結局はお金を管理している人たちが絡んだ話なのは間違いないからね。今やメジャーレーベルやレコード会社は管理的側面をとても強化してきているし、特に最近彼らの多くが芸術とは縁もゆかりもない「企業」に買収されているから、その傾向はますます強くなっていると思う。だから、レコード会社の経営者たちは「どれが資産でどれが資産じゃないか」とか「何をカットすべきか」といった事ばかりに目を奪われて、自分たちが買ったメディアに適応できないようなものをドンドン抹殺するようになっていると思うんだ。例えばインディ系の連中や彼らの作り上げたシステムに乗らない連中とかをね。実際、同じような事がクラブシーンでも起こってきたと思うし、多くの人がクラブシーンはメディアに殺されたって言っているけど、本当にその通りだと思うよ。

 

 

A Guy Called Gerald

 

――と言うと、(クラブミュージックは)ポピュラリティの自然なサイクルによって衰退してきた訳ではないという事ですか?

 

A Guy Called Gerald : そうは思わないね。いつでもクラブシーンはメインストリームからは切り離された存在だったからね。

 

 

――でも90年代には、クラブシーンはメインストリームでも十分にポピュラーだったし、とても切り離されていたようには見えませんが?

 

A Guy Called Gerald :だからそこに危険が存在していたんだよ。(メインストリームでポピュラーになった存在といえば)Paul Oakenfoldsのようなアーティストがいる訳だけれども、彼も元々はアンダーグランドな場所から色んな音楽を発掘していただけであって、本来そこはメインストリームのメディアが好むような音楽は存在しない、音楽を純粋に楽しむだけの快適な場所だったはずなんだ。でも実際に彼らの音楽が目に見えるようなレスポンスを得るようになると大勢の人が騒ぎ出して、やがて「Led Zeppelinも好きだけど、ハウスやドラムンベースなんかも好きです」みたいな人達もたくさん出てくるようになってしまったんだ・。それで、気がつくと数多くのサブジャンルが生まれ、全ての質が低下しているという事態に陥ってしまったというわけ。それはあたかも(90年代人気があった頃のダンスミュージックを好きだった人たちが)、その魂をダンスミュージックから抜き取ってシーンを後にし、今ではペチュニアオイルで頭を固めて、髪を伸ばし、壁に向かってヘッドバンギングしながらギターを弾くまねをしているみたいなものだと思うよ。

 

 

――それでは、今現在のダンスミュージックシーン自体には何が起こっていると思いますか?

 

A Guy Called Gerald : またアンダーグラウンドな方向へ物事が向かい始めているような気がするね。もし、君がアーティストだったら、今こそ自分の小さなトンネルを掘ってクリエイティブに自分の音楽と共に前に進むべき時だと思う。メディアの事や、ファッションモデルの事なんかは全て忘れてね。今や、インターネットの世界に自分自身のポータルを作る事が出来るんだし、それを使えば自分のやりたいクリエイティブな事はどんどん出来ると思うんだ。受身になる必要はないし、レコードレーベルに媚を売る必要もない。もはや彼らは存在していないも同然だからね。

 

 

―― Copy ControlやMP3についてはどのように考えていますか?

 

A Guy Called Gerald : 起こるべくして起こった事だね。これから同じような事が色んな国で起こっていくんじゃないかな。何かを永遠に抑え付けておくという事は出来ないからね。そして、もし君がクリエイティブなアーティストだったら、逆にこれはとてもエキサイティングな状況だと考えて欲しい。特にインターネットに自分のポータルを持っている人たちは、アイデアが浮かんだらすぐにそれをインターネットにアップする事が出来るわけだし、それに対しての何らかのフィードバックがあれば、それ自体が十分な報酬だと思っていいわけだからね。そして、その作業を続けながらファンベースを作り上げる方法を探して、その流れでライブをしていくんだ。メジャーレコード会社の凋落が著しい今こそ、何百通りもの道が開けているのは間違いと思うよ。

今のメジャー・レコード会社の状況は、ズボンをはかずにファーの毛皮を着ているようなもので、彼らは手を携えて、ボーイズ・バンドやタレント・コンテストやポップ・アイドル等で何とか食っていこうとしているんだけど、そんな上辺だけの事をやっている限り、決して長くは続かないと思う。今の十代のキッズたちはプレイステーションで曲を作れる環境にいるんだから、これから年齢が上がればそんなものに騙されたりはしないからね。いずれにしても、これまでアーティストが何かを一番たくさん手にするということは滅多になかったと思う。常にメジャーレコード会社から剥ぎ取られていたからね。彼らは、「(Copyの問題に)苦しんでいるのは可愛そうなアーティストです」と言うけど、それはあたかもジョージ・ブッシュがアフガニスタンで恵みの箱をちらつかせながら、「この貧しい人達を御覧なさい-どうか彼らを助けると思って私にお金を渡しなさい」と言って、実際にはその金でミサイルを買っているようなものだと思うんだ。ここ最近僕は、「アーティストはレコード会社に大変丁寧に扱われていて、もしレコード会社がなければアーティストは今ある生活を維持することすら出来ないんですよ」などのレコード会社の激しい反論を耳にして来た。でも、結局のところ彼らはリソースに近づいて、それらに染みをつけ、脱水して乾かして、しまいには吐き出してしまっているに過ぎないわけで、アーティストを見つけては自分たちの買ったメディアの力で育成し、最後には新しいものが見つかったと同時に前のものを吐き出してしまう、というサイクルを繰り返しているに過ぎないんだと僕は思う。

 

A Guy Called Gerald

 

――さて、ここらでクラブシーンに話を戻したいと思いますが、今騒がれているアシッド・ハウス的サウンドのリバイバルについてはどう思いますか?

 

A Guy Called Gerald : よく分からないな。いつもトレンドってあるだろう?でも、それも結局はメディアが煽っているだけの事なんだと思う。例えば「今週のホットアイテムはこれ!」なんてね。「The Wiz」って言う映画を知っているかい?いわゆる「オズの魔法使い」の黒人版のような映画なんだけど、その中のワンシーンで、ディスコの真ん中に偉いヤツが立って、いかにトレンドというものが変わっていくのかをパロディにした台詞を吐くところがあるんだ。この映画が作られた当時はちょうどラップがポピュラーになった頃で、その状況をこのディスコのシーンで皮肉っていたりするんだけど、そいつが「今日の色は金色です」と言うと全員が金色の洋服を着なきゃいけなくて、彼が「いや、やっぱり緑だ!」と言えば、みんな緑の洋服に着替えなきゃいけないんだよね。まぁ、実際にこういった風潮が混乱を生んでいるのは間違いないし、みんなが同じチャンネルに沿って動いているというのが今の状況なんじゃないかな。

 

 

――でも、何人かの人はアシッド・ハウスの魅力を再発見して、トレンドに左右される事なくそのサウンドに興味を持つようになったとは思いませんか?

 

A Guy Called Gerald : いや、トレンドに乗っているだけだと思う。だって、アシッド・ハウスは今までもずっと存在していた訳だからね。それと同じような事を、今日のエレクトロ・シーンのサウンドを聞いたり、それにのめり込んでいる人達を見ていると感じるよ。

 

 

――あなたから見ると、最近のエレクトロ・シーンは、本来のエレクトロ・ミュージックの再定義がなされた形だとは映っていないのですか?

 

A Guy Called Gerald : 違うね。なぜならそれもトレンドだからさ。もし、彼らがそれを「ニュー・ロマンティック」と呼ぶのであれば、それは正しい考え方だろうけど・・・。でも、ニュー・ロマンティックはエレクトロとは全く関係ないし、そもそもエレクトロは、Afrika BambaataやArthur Baker達によって生み出された音楽なんだ。だから、今「エレクトロ」と呼ばれているサウンドに夢中になっている人達を見ると、かつてニュー・ロマンティックに夢中になっていた学生たちの姿を思い出すね。丁度、我々がエレクトロを聴いていた時期に、ニュー・ロマンティックもその周りで盛り上がっていたからね。でも、エレクトロはゲットーのダーティーな音楽だったし、決してトレンディなものではなくアンダーグラウンドなものだったんだ。マンチェスターの中心地に出かけて行って簡単にエレクトロを聞くなんて事はほとんど不可能な事だったし、エレクトロを聞くためには、その場所を本当に真剣に探し出さなければならなかったしね。だから、今、みんながエレクトロと呼んでいるサウンドは、Gary Numanがやっていたようなニュー・ロマンティックに近い存在なんじゃないかな。

 

 

――少し話題を変えますが、日本のクラウドについての印象は如何でしたか?

 

A Guy Called Gerald : とてもいい反応だったね。そこでプレイされている音楽を一生懸命聞こうとする姿勢は、ドイツのクラウドを思い出したよ。ただ、ある場所では、僕がドラムン・ベースをプレイすることを期待していたみたいでね。でも僕は生のドラマーを入れたりして、少し違った事をやりたいと思っていたので、結果として何人かの人を不愉快にさせる事になったみたいなんだ。まぁ、確かにどこかへ出かける度に単純にスイッチのオン/オフをするだけならそんなに楽な事はないし、期待通りの事をやれば何人かを不愉快にせずに済んだのかもしれないけど、やっぱり僕は前に進み続けなければならないからね。勿論、そういったタイプの音楽をやりたくないと言っている訳じゃない。ただ、僕にとってエレクトロニック・ミュージックというのは、それぞれ異なる感情と色で構成された「虹」のような存在なんだ。僕が怒っているときには、ドラムン・ベースというカラーで出てくるかもしれないし、本当にハッピーでくつろいでいる時にはもっと雰囲気のあるアンビエントなサウンドになるかもしれない。こういった全ての感情と音が混ざり合って色彩を構成しているのが僕自身のスタイルなんだ。

 

A Guy Called Gerald

 

――ところで、あなたの尊敬するアーティストは誰ですか?

 

A Guy Called Gerald : Chick CoreaやHerbie Hancockが好きだね。あくまで曲によりけりだけど。曲で言うと、Derrick Mayの「It Is What It Is」やChick Coreaの「The Woods」が好きだな。

 

 

――あなたの長いキャリアの中で最も印象的だった出来事は何ですか?

 

A Guy Called Gerald :全てのダンスミュージック・シーンを幅広く見渡す事が出来たのが最も印象的だね。

 

 

――あなたがDJをしている時に経験した最悪の事態は何ですか?

 

A Guy Called Gerald : 実は香港でプレイしている時に悪夢のような事があったんだ。突然、針がグラグラと揺れだしたのがハッキリと見えて、何とか次のレコードをもう一台のターンテーブルにセットしようとしたんだけど、とうとうレコードの音があちこちにジャンプし始めてしまって・・・。慌てて次のレコードに差し替えた、って事を覚えているよ。

 

 

―― 最後に何かメッセージをお願いします。

 

A Guy Called Gerald : エレクトロニック・ミュージックから目を離さないでほしい。これからはもっとアンダーグラウンドになっていくと思うし、音楽的だけではなく、ヴィジュアル面でも新たなレベルの創造性が生まれてくると思う。全てのメディアはもっとインタラクティブになって一つの形に集約されていくだろうし、未来のアーティストは殆ど多次元的な存在になるんじゃないかな。いずれ音やヴィジュアルだけに集中するという事は難しくなるだろうね。

 

 

 

End of the interview

Pioneer DJ

COPYRIGHT © 2015 HigherFrequency ALL RIGHTS RESERVED.