HigherFrequency ハイヤーフリケンシー

Pioneer XY 3B

Highlight

Pioneer Professional Audio XY-3B 先行試聴会

  • 2017.09.15(Fri) @ STUDIOCOAST
  • Text & Photo : Hiromi Matsubara

  • 2017.10.10

  • CDJ-2000NXS2 DJM-900NXS2

世界が注目する至高のナチュラルサウンド

2013年にPioneer DJ/Pioneer Pro Audioがクラブ向けのサウンドシステム市場への参入に伴って発表した、クリアでナチュラルなサウンドをシリーズ最高出力で再生する業務用PA/SRスピーカー「XY Series」に、今年新たなトップモデル「XY-3B」と「XY-2」が誕生し仲間入りした。すでに国内では、7月に開催された野外フェスティバル『rural 2017』のIndoor Stageから試験的に導入され、8月には『FUJI ROCK FESTIVAL’17』でも稼動。そして9月15日に正式発表として、新木場STUDIO COAST(ageHa)での先行試聴会が開催された。

 

今回の先行試聴会では、新製品「XY-3B」と、高出力と高感度を備えたサブウーファー「XY-218HS」によって構成された約2メートルほどの高さのスタックを、DJブースを挟むようにしてひとつずつ左右に配した、試聴会に最適なステージが組まれた。ステージでは初めに、関係者に向けた「XY-3B」と「XY-2」の開発経緯や技術/機能についてのプレゼンテーションが開発担当者から行われ、その後に、DJ YAZI、sauce81、Asusuの順番でパフォーマンスが行われた。それぞれのパフォーマンスは僅かな時間ながらも色濃くオリジナリティが発揮され、フロアに作り出された音像はまさに三者三様だった。
〈Black Smoker〉とその中核ユニットTHINK TANKのオリジナルメンバー/DJとして多くの信望を集め、今年8月には『Berlin Atonal』出演やTresorへの出演などで待望のヨーロッパデビューを果たしたDJ YAZIは、プレイ時間の9割をノンビートのドローン/アンビエントで紡いでいた。ここからビートを加えながら3時間でも4時間でもプレイしていきそうな緊張と期待さえ入り混じったオープニングセットだったが、様々なジャンルを超越して混合させていく予測不能なDJ YAZIのスタイルの濃密な部分がフロアにはハッキリと映し出されていた。

続く、sauce81はライヴセットで登場。Pioneer DJのモノフォニック・アナログ・シンセサイザー「TORAIZ AS-1」をセットアップの中に加えてのパフォーマンスを披露した。DJ YAZIが終盤にかけたトラックとの軽いセッションを交えながら滑らかにセットを始めると、序盤に少しダビーなプレイを挟んでから、それまでの雰囲気とは真逆にも近い、陽気なグルーヴを一気に展開。“Natural Thing”や“Dance Tonight”など自身のヴォーカルを加えた魅せる楽曲も「XY-3B」を通じて、細密かつ大迫力でフロアに届けてくれた。
ラストを務めたのは、ベースミュージックとテクノ/ハウスの異種交配を推し進める潮流を牽引するUK・ブリストル発のレーベル〈Livity Sound〉のメンバーで、今年から拠点を東京に移したプロデューサー/DJのAsusu。彼が密に関わっている〈Livity Sound〉や〈Timedance〉からの楽曲を多く使用したDJセットは、終始、変拍子のキックを地面深くまでジワリと響きわたらせていた。また、彼の使用する楽曲で特徴的に感じられる、ミニマルながらもフックのしっかりとした上音も新たなスピーカーによって中高域でクリアに再生されており、より深い時間帯の暗いフロアのような状況であれば十分なトリップ感も体感できそうな印象だった。短時間でミックスを重ねて基礎のグルーヴを構築しながらも、イコライザで明確にレイヤーを整えるプレイも自然に分かり易く、ある意味でAsusuが最も「XY-3B」の試聴向けなセットだったかもしれない。

世界的にも注目を集め、各地のクラブやフェスティバルでもインストールが行われているPioneer Pro Audioのサウンドシステム。特に2016年にはロンドンが世界に誇るナイトクラブ「Fabric」のオフィシャル・オーディオ・パートナーに選出され、Fabricとしては約14年ぶりにRoom Twoのサウンドシステムを全てXY Seriesに入れ替えたことを発表した。今回発表された「XY-3B」と「XY-2」も、7月にFabricが開催した『Lovebox Festival 2017』のFabric Tentステージに早速導入されていたほか、同じく7月に開催された世界的ダンスミュージック・フェスティバル『Tomorrowland』を経て、9月にはフランスのシャトゥーで開催された『Elektric Park Festival』でもインストールされ、ますますの評価と関心を高めている。

 

「XY-3B」は、もとよりXY Seriesのストロングポイントである高解像度と高い表現力にさらにフォーカス。「ナチュラルサウンドを高出力で」をコンセプトに掲げ、3Dプリンターを使用した理想的な内部構造や形状の試作と評価を重ねた開発期間に3年もの歳月を費やし、そして前述の通り数々の国内外フェスティバルでのフィールドテストを経て商品化に至ったという。製品名にも入っている数字の「3」は、特徴でもある「3ウェイ(スピーカー)」を示しており、2×12インチ低域ドライバー、1×8インチ中域ドライバー、1×1インチ高域コンプレッションドライバー、というように音域ごとに分かれた3つの音の出口によって構成された、シリーズ最高出力のスピーカーとなっている。

 

「XY-3B」の最大の特徴は、Pioneer Pro Audioの独自開発による2つの新技術、「デュアル・フェーズプラグ構造」と「中高域一体型ウェーブガイド・ホーン」の搭載にある。
まず「デュアル・フェーズプラグ構造」とは、8インチの中域ドライバーの前面に搭載されたこのスピーカー独自の2種類のフェーズプラグ(≒音波を調整するパーツ)のこと。一つ目のフェーズプラグはドライバーのコーン型振動板に沿ったフィルターのような形状をしており、振動板のそばでコンプレッションをかけることで高い音圧を生み出す役目を果たしている。ラジアル型とリング型それぞれの長所を融合した7方向の放射状で、二重のリング状のスリットは、広帯域でのタイムアラインメント効果(=スピーカーから耳に音が届く時間の調整)を得て、曲面コーン固有の位相干渉(=音の波動の強弱を不安定にすること)の影響を解消。これによって高解像度でナチュラルな音質を実現している。そして、もう1つのフェーズプラグは試作を重ねて行った極めて綿密な計算に基づいて設計されており、ウェーブガイド(=音の通り道)との間にエクスポネンシャルホーンを構成することで、ナチュラルな音色を保ちながら高効率に音を放射することを可能にしている。
そしてもう一つの「中高域一体型ウェーブガイド・ホーン」は、各音域が物理的にセパレートされている一般的なホーン構造とは異なり、高域ホーンを中域ホーン内部で繋げることによって中高域の一体感を高め、音域の幅広い音源でもバランスよくクリアに耳で感じることができる技術。ホーン内部で繋げるだけでなく、「XY-3B」スピーカーの最上部に位置する8インチの中域ドライバーと、その下に位置する1インチの高域コンプレッションドライバーの奥行き方向を揃えて配置することで、中高域クロスオーバー周波数付近の位相干渉を軽減させている。そして、緻密な計算により全てが曲面で構成されたウェーブガイド(音の通り道)は、ナチュラルな音質を保ちながら、水平50度垂直35度に完全にコントロールされた指向性を有している。このウェーブガイドによって、サウンドエリア内には高音圧を届けながらも、サウンドエリア外の音圧を低減することにより、屋内では壁の反射によるエリアの乱れを抑え、屋外ではサウンドエリア外への騒音低減の効果を実現している。
また「XY-2」は、この2つの技術を備えた「XY-3B」の中高域ホーン部分によるミッドハイ・スピーカーとなっているため、大規模スタジアムのPAスピーカー用途やDJブースモニター、「XY-3B」のサポートとして使うことができるモデルとなっている。

要するに「XY-3B」は、大規模クラブのメインスピーカーとしても、さらなる広範囲に音を届ける必要性の高まるフェスティバルへの持ち込み音響機器としても十分に使用が可能なモデル。音域ごとに強力なドライバーを備えた高出力かつ高解像度な構造を持ちながら、フロアに立つ私たちオーディエンスの身体や耳にも無理の無い最も心地の良い状態=「ナチュラル」に音楽を堪能することができるスピーカーというわけである。今年のフェスティバル・シーズンはそろそろ終わってしまうが、次は年末に開催される屋内の大規模なイベントでの導入を期待したい。もしかすると、「XY-3B」のゴールドに輝くフェーズプラグを世界中で見かけることができる日は近いかもしれない。

Pioneer DJ

COPYRIGHT © 2015 HigherFrequency ALL RIGHTS RESERVED.