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Highlight

Pioneer Pro Audio Japan Tour 2017

  • Text : Hiromi Matsubara

  • 2018.4.25

  • 3/30 追加

前進を続ける屈指のサウンドシステムが日本を巡る

Pioneer Pro Audioが国内でのサウンドシステム事業を本格的に展開し始めた2015年から、HigherFrequencyではレポートや企画担当者へのインタヴューを行い動向を追い続けてきた。始動から僅か数年のうちに、国内の様々なダンスミュージックのフェスティバルやクラブイベントへの継続的な協賛を行うようになり、都内ではCircus Tokyo、大阪ではALZARといった音に強いこだわりを持ったクラブにXY Seriesがフル・インストールされたことを皮切りに、北は北海道から南は沖縄までの15都道府県内に50を超える店舗に導入され、今もなお急速にその評判と知名度を高めている。そして今年はその更なる発展をレポートすべく、『Pioneer Pro Audio Japan Tour』と銘打ち、Pioneer Pro Audioのサウンドシステムが使用された各地のフェスティバルとイベントに同行して取材を敢行。数ある中でも、フラッグシップモデルのGS-WAVE Seriesや、2017年9月に正式発表された最新モデルXY-3Bが使用された特に重要なフェスティバルとイベントをピックアップし、各会場でサウンドシステムがいかなるセッティングで稼働したのかを会場の模様と共に振り返っていく。

 

 

Photo: jiroken

Rainbow Disco Club 2017

2017/05/03〜05/05 @ Higashi-izu Cross Country Course

 

『Rainbow Disco Club』は、2015年から伊豆半島の稲取高原に広がる東伊豆クロスカントリーコースへと会場を移して3年目を迎えた。国内外最高峰の音楽とパフォーマンス、好天と大自然の恵み、そしてそこへ集まる人々のムード。デイタイムだからこそ集約できる全ての要素が空間として混然一体になった時の至福感は、年を重ねるごとに格別な味わいとなっている。日中の盛り上がりも21時まででクローズしてしまうメインステージに対して、夕方から24時までオープンているRed Bull Music Academyステージ(以下、RBMAステージ)には、そんな至福の時が少しでも長く続いて欲しいと願う人たちが集まる。そして、そのRBMAステージの前方両脇にそびえ立ち、上質な音をフロアへと届けているサウンドシステムが、Pioneer Pro Audioのフラッグシップモデル「GS-WAVE Series」である。

国内およびアジアで初めてGS-WAVE Seriesを本格的に導入し披露したのが、東伊豆に会場を移して初年度の『Rainbow Disco Club』のRBMAステージだった。それ以来、3年連続でRBMAステージのサウンドシステムはPioneer Pro Audioが担い、『Rainbow Disco Club』の内容と同様にGS-WAVE Seriesを主体としたセッティングも毎年進化を遂げている。また今年は、国外でもそのライヴセットに定評のあるAkiko KiyamaとKeita Sanoや、新世代エクスペリメンタル・ソウルバンドのWONK、エレクトロニック・ソウルユニットの77 KARAT GOLDがギタリストのKASHIFを迎えたバンドライクなセットで登場するなど、様々なパフォーマンス・スタイルと幅広いジャンルが一堂に会していたため、GS-WAVE Seriesの最大の長所である“音源に忠実でクリアかつ身体の芯まで伝わるダイナミックな出力”が、いかに多くの音楽をカヴァーすることができるのかを体感することができた。

そして『Rainbow Disco Club』のハイライトでもあるRBMAステージのナイトタイム。1日目のPalms TraxとGerd Janson、2日目のSkeme RichardsとDJ NoriのB2Bセット、両日ともに終演まで大入りとなっていた。大音量の中でも人が気持ち良く居続けることができるというのも、GS-WAVE Seriesの強みである。それにしても、サウンドシステムの出力によってか、詰め掛けた人々の激しい動きによってか、フロアの床が小刻みに波打つように揺れて盛り上がるのは、国内でも『Rainbow Disco Club』のRBMAステージが唯一かもしれない。

 

Line up

DJ: Gerd Janson, Palms Trax, Skeme Richards B2B DJ NORI, Sapphire Slows, MISO

Live: 77 KARAT GOLD×KASHIF, Keita Sano, AKIKO KIYAMA, WONK

RAINBOW DISCO CLUB 2017Report

Rainbow Disco Club 2017

快晴のパーティーに生まれた多彩なハイライト

Body&SOUL Live In Japan

2017/06/04 @ お台場Body&SOUL Live in Japan特設会場

 

1996年のニューヨークに誕生してから20年以上も伝統と革新を最前線で継承し続ける世界屈指の3人のDJ──François K.とJoaquin Joe ClaussellとDanny Krivitが、Pioneer Pro Audio最高峰のサウンドシステムGS-WAVE Seriesを通して、その日限りの音の物語をフロアへ届ける。これ以上に無い、『Body&SOUL Live In Japan』だけの組み合わせだ。そして何を隠そう、GS-WAVE Seriesの原型を設計/開発したのは、彼らと同じくニューヨークを拠点に、Sound FactoryやVinyl、Roxyを始めとする数々の著名クラブへとサウンドシステムを導入してきた伝説的エンジニアのGary Stewartである(ちなみに、”GS”はGary Stewartのイニシャルに由来している)。惜しくもGary Stewartは2012年9月にこの世を去っているが、彼が残した魂と技術はサウンドシステムに込められ、お互いに長い年月を経て発展を重ね、ここ日本で巡り会っているのだ。

この必然的な組み合わせは、『Body&SOUL』が晴海客船ターミナル特設会場で開催されていた2016年に誕生した。『Body&SOUL』がニューヨークで始動してから20周年の年だった。その2016年は、2スタックのGS-WAVE Seriesを3人がプレイするステージの両脇に設置し、リアの両端にはコンパクトモデルのXY Seriesを配して長方形型のフロアを型取って音場を作るというセッティングで行われたが、開催地をお台場特設会場へと移した2017年はさらにアップグレード。近くに反響を生むような壁や建物が無い、広く平坦なコンクリートの地面の先には東京湾を臨むことができる、開放感のある土地に4スタックのGS-WAVE Seriesを配して扇状のフロアを作り上げた。国内のダンスミュージックイベントでGS-WAVE Seriesを4スタックで稼働させるのは、今年の『Body&SOUL』が史上初。海外のクラブなどでは採用されている、GS-WAVE Seriesの強みを最大限に引き出して使用する際の、理想的な台数とセッティングが実現したのだ。さらに、フロアのセンターゾーンを覆うようにトラスと白布で作られたルーフからはトゥイーターポッド(WAV-TWPOD)が吊り下げれられ、ダンスミュージックの幸福を降り注ぐかの如く、人々を包み込むように高音をフロアに響かせていた。

例え、『Body&SOUL』の3人が行うB2Bをクラブで体感したとしても予期せぬサウンドジャーニーが訪れるのかもしれない。しかし、4スタックのGS-WAVE Seriesによる屋内さながらの音響に加えて、果てしなく突き抜けるような晴天と、海とコンクリートからの照り返し、鮮明に映る色とりどりの風船やライティングなど、野外ならではの視覚効果が相まってこそ、『Body&SOUL』は最高級の真価を発揮するのだろう。21年目を迎えてもなお、年に一度のクラブイベント以上の体験へと進化する意気込みを感じた。

 

Line up

François K., Joaquin Joe Claussell, Danny Krivit

Body&SOUL Live in Japan Creative Director

Yoichi Oyama

日本でも長きに渡って開催してきたBody&SOULは、現在に至るまで様々なサウンドシステムを試してきました。時には音楽とフィットせず、DJたちに怒られたりも… 時代の移り変わりに合わせて常に挑戦は続けていきたいのですが、そんな歴史の中でもGS-WAVEはParadise Garageの意志を継ぐスピーカーとして、抜群の相性をみせています。ダイナミックでありながらも柔らかい音は耳疲れもなく、永遠と踊り続けることでカタルシスを得るダンスミュージックで真価を発揮するのではないでしょうか。しばらくは挑戦を控えてお付き合いさせていただくことになりそうです。

rural 2017

2017/07/15〜17 @ Uchiyama Camping Village

 

世界基準のアンダーグラウンドイズムに徹底して則ったラインナップを、深まる夏と避暑のコントラストを感じることのできる日本らしいロケーションで体感することができる『rural』。2017年は会場を長野県佐久市の内山牧場キャンプ場に移しての開催となったが、結論から言うと、実際に現場へと足を運んだ人たちの間では『rural』史上最高との呼び声も高かった。標高1200mに位置するOpen Airステージのフロアから望むことのできる、佐久高原に切り立つ名山“荒船山”や八ヶ岳連峰などを含む360度パノラマは国内フェスティバルでも随一の景観と言える。そして、見渡す限り青々と生い茂る木々と雲を纏って聳立する山々が織り成す東洋的な景色に囲まれながら、GAS、Roly Poter、Felix Kのライヴセットや、DJ NOBU、Lena Willikens、Svrecaのロングセットなど、多種多様な背景から切り込む先鋭的な音楽を堪能することができるのだ。ラインナップと相重なって、快晴の心地良さもあれば、多少の天気の崩れも風情に変わる。まさしく『rural』の真骨頂とも思える体験の連続だった。

その一方で、ふもとのレストハウスを使ったIndoorステージでは、『rural』ならではの視点で厳選された、国内各地で活躍する世代とジャンル幅が豊かなアーティスト/DJが29組も集結し、次々とほぼノンストップでプレイ。その時間は前夜祭から合わせると約64時間にも及ぶ(前夜祭含めた4日間で音が止まるのは合計で3時間半)。そして、そんなIndoorステージで、Pioneer Pro Audioの最新モデル「XY-3B」がメインサウンンドシステムとしてデビューを果たした。

両者の関係性は深い。Pioneer Pro Audioが本格展開を始めた2015年に国内で初めてコラボレーションを行なったのが『rural』であり、その時のことが、現在のように様々なイベントでシステムを稼動させるきっかけにもなったという。そして『rural』を始めとした国内の現場でのケーススタディと世界中のエンジニア達からのフィードバックを基に、3年間の開発期間を経て、2017年にようやく完成したのがXY-3B(とXY-2)なのである。

『rural 2017』のIndoorステージが、デビューにしてハイレベルな現場であったことは間違いない。前夜祭からNuel、Asusu、ENA+Felix K、CRZKNYのライヴセット、本祭ではDJ Yazi、Chee Shimizu、AOKI takamsa、悪魔の沼、R N S TやHakobuneのライヴセットなど、今年の会場に集まった多くの人が期待を寄せるアクトたちが立て続けにパフォーマンスを繰り広げた。しかし実に堂々たるデビュー。従来のXY-Seriesよりも高いXY-3Bの出力と、高域と中域のホーンを内部で繋げた新たな構造によって、より高い密度の音像が空間に広がり、またそれに全身で応じる人々も多かった。決してレストハウスのシンプルな作りや雰囲気からだけではない、海外のウェアハウスパーティーさながらのエネルギーとムードを生み出すのにXY-3Bが大きな役割を果たしているように思えた。

 

Line up

DJ: AOKI takamasa + Yoshiki + kohei, 悪魔の沼 (Akuma No Numa), Chee Shimizu (Organic Music), Apollo (eleven., Blackcream), DJ Yazi (Black Smoker, Twin Peaks), Halptribe (phc), SUNGA + COGEE (Blacksheep), AKIRAM EN (forestlimit), Nehan (Artemis),  KO UMEHARA (Komabano Oscillation Lab.), Stone Neck (S.I.N), Daisuke Matsusaka (Off-Tone), C_Olvrin (North Country), David Decembre (Sound Garden), Mimu + Hidai (Paramount), Mari Sakurai (IN HA), Tatsuoki + Kannabi, Nari (CYK), Shimano (manosu), Bob Rogue (Wiggle Room), Yuki Moriyama (Viorhythm), Ayana JJ (Smitten), SECO (addictedloop), Takahashi (VETA), Nao (addictedloop, rural)

 

Live: hakobune (Tokyo), Sofheso (Sapporo), R N S T (Tokyo), SINSENSA (Tokyo)

 

Pre Party

Nuel (Aquaplano, Further Records), Asusu (Impasse, Livity Sound), ENA + Felix K – Drum’n bass DJ set (Hidden Hawaii), CRZKNY – Live set, Koba (form.), BLACKMAMBA (Redlight)

rural Organizer

Atsushi Maeda

ruralでは2015年より、Pioneer DJさんより是非ruralで使って欲しいというご提案を頂き、それ以降毎年Indoorステージにて使用させて頂いています。ruralのIndoorステージでは、テクノを中心に、ハウスやアンビエント、ディスコなどまでジャンルは多岐にわたります。PAさんとPioneer DJさんの連携もすでに出来上がっていることもありますが、そのどのジャンルであっても特徴に合ったチューニングをして頂くことで、マルチに対応できるものだと思っています。

FUJI ROCK FESTIVAL “Day Dreaming” stage

2017/07/28〜7/30 @  新潟県湯沢町苗場スキー場

 

『FUJI ROCK FESTIVAL』で唯一、日中にもダンスミュージックを堪能することができるエリアが会場内で最も高い場所にある。日本最長のゴンドラ「ドラゴンドラ」に乗って、苗場の大自然と会場の全景を臨みながら山々を越えて行くこと約20分で辿り着く標高1346mの山頂エリアに広がる「Day Dreaming」だ。快晴でも地上に比べると涼しく、空気も澄んでいて、全体的なムードもまったりとしている。そのため、リフレッシュあるいはリラックスするために訪れる人も少なくないが、ダンスミュージックを好む人にとっては、国内屈指のDJたちがDay Dreamingで繰り広げるいつもとは異なる選曲のロングセットがどうしても気になってしまう。

Pioneer Pro Audioは2015年からDay Dreamingのサウンドシステムを担当している。高原の少し小高くなったところにドーム型のブースが組み上げられ、その両脇にXY-Seriesを1スタックずつ配置するセッティングは昨年と変わらなかったが、今年は『rural 2017』でデビューした直後の3ウェイスピーカー「XY-3B」を早速使用。ブース目前のダンスフロアとなるゾーンには、クリアな中高域が空気中を滑らかに伝わってくるハイクオリティな音場が作られていたが、それ以上に今年は高原全体への音の届き具合が素晴らしかったように感じた。Day Dreamingを訪れる人たちの多くはブースの前でがっつりと踊るというよりも、少々離れた位置で座ったり寝転んだり、談笑をしながら過ごして、ダンスミュージックをより高原全体の雰囲気と一体化した状態で聴きながら楽しんでいることが多い。野外ではどうしても音像が帯域ごとに分離して空中へと抜けていってしまうように聴こえがちだが、XY-3Bは中高域を音波として扇状に浸透させていくような出力で全体をカヴァーしていた印象を受けた。

 

Line up

Day1: HOBOBRAZIL, JUZU a.k.a. MOOCHY, ARTMAN a.k.a DJ K.U.D.O.

Day2: Mustache X, Wata Igarashi, NAOKI SERIZAWA

Day3: Licaxxx, DJ YOGURT, FORCE OF NATURE

LIFE FORCE 2017

2017/11/11 @ BUCKLE KÔBÔ

 

昭和島のど真ん中に位置する東京モノレールの昭和島駅から約20分。羽田鉄工団地を通り抜けた先にある京和橋で京浜島へと渡り、倉庫や工場しか立ち並んでいないエリアを歩き続けていると、ひっそりと現れるのがシェアアトリエ/スペースのBUCKLE KÔBÔ。外観は周囲の建物と大差は無く、内部もおそらく大きく様子が変わったわけでも無さそうだが、むしろ工場としての原型を留めている方が、秘密の場所で開かれているウェアハウスパーティーもしくはアンダーグラウンドレイヴといった実感が湧いてくる。2階のメインフロアへと上がって行くための細く狭い階段や、設営を眺めていると目に入ってくるフロア隅の1階と2階を繋ぐクレーン、剥き出しの鉄線(電線?)などが、自由な気分を余計に引き立てているようにも思えた。Mixerの幻想的なスペースデザインは空間の開放感を何倍にも感じさせてくれた。サウンドデザインを手掛けている浅田泰さんはインタヴューで「本来の形に帰った」と言っていたが、僕の世代からしてみれば今年の『LIFE FORCE』は新鮮だった。

本来の文脈を継ぐウェアハウスパーティーだとしても、クオリティの高いコンパクトなサウンドシステムを使うことができるのは2010年代の在り方として別に贅沢をしているわけではない。Pioneer DJは今やあらゆるダンスミュージックカルチャーをサポートしているのだから。当日は、『rural』や『FUJI ROCK FESTIVAL』などを経て一層の調整を重ねた後の、9月にようやく正式発表された「XY-3B」を主軸に組んだ2スタックがブースを挟む形で配置された。しかし、サブウーファーのXY-218HSを横置きで2段重ねた上にXY-3Bを乗せていた従来のスタックではなく、空間規模や配置位置に合わせて、2台のXY-218HSを縦置きにして並べた上にXY-3Bを乗せた、新たなスタックで稼働をさせていた。音質はもちろん、反響で壁や床が鳴って空間がパンクしない程度の音量を調整するのも大切な上品さなのかと。ウェアハウスパーティーのプリンシプルは、自由で開放的であるよりも、一夜を完遂できるコントロールが相応しいような気がしてきた。

 

Line up

Tasker (Whities), Inna, pAradice, MaNA

 

 

Yutaka Asada x Yuji Murai Interview

Pioneer DJ

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