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CAMP Off-Tone 2015

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CAMP Off-Tone 2015

  • CDJ-2000NXS2 DJM-900NXS2

おいでよ、アンビエントの森へ

来る9月26日(土)に、野外アンビエントパーティー『CAMP Off-Tone 2015』が、山梨は甲府にあるマウントピア黒平にて開催される。また、それに先立って9月8日(火)にはDOMMUNEでの特集も決定し、開催に向けますます勢いも増している。今年で発足5年目のOff-Toneは、アンビエントサウンドを大勢で楽しむという遊びを提案し、これまで多くのアーティストと共に空間を作り上げてきた。

 

中でも、今年で4回目の出場となるKAITOことHiroshi Watanabeはもはやこのパーティーに欠かせない存在である。去る5月下旬、出演オファーと共に彼のインタヴュー企画が持ち上がり、双方スタッフで内容を話しているうちに、「オーガナイザーのMatsusaka Daisukeも参加した方が良いんじゃないか。お互い既によく知った関係だし、かしこまったインタヴューより面白い話になりそうだ」という運びとなり、今回の対談が実現することとなった。

 

進行役に『CAMP Off-Tone』の屋内エリア「Inner Space」を企画から担当するYoshinori Saitoを招いて、東京郊外でひっそりと行われた対談は、常に「アンビエント」をキーワードにしながら、オーガナイザーとアーティストの枠を超え、内面から空間へ、過去から未来へと広がり、3人のパーソナルな感覚が浮き彫りとなる非常に深いものとなった。

Yoshinori Saito:まずさっそくなんですが、みなさんアンビエントに触れたきっかけっていう部分からお話伺いたいなと思うんですけれども。

Matsusaka Daisuke:自分の場合は当時、音楽雑誌を読んでも載っている音はほとんど地元では手に入らないような時代で。でもAphex Twinの情報を雑誌で読んで、とにかく欲しかったんです。それでしばらくしてからようやく手に入ったアルバム、それが『Selected Ambient Works Volume 2』だったんですよ。

Yoshinori Saito:2枚組のやつですね。

Matsusaka Daisuke:そうそう。でも聴いたら、思い描いていたAphex Twinとまるで違ったんです。それで調べたら、そのアルバムのタイトルになっている「アンビエント」っていう音楽があるんだ、とわかったんです。そして、同じ頃に〈Virgin〉がコンパイルした、タイトルにズバリ「Ambient」って書かれたコンピレーション(※『A Brief History Of Ambient Volume 1』超重要な29曲を収めた名盤)を見つけて手に入れました。この2枚が自分にとってアンビエント・サウンドの原初体験ですね。

Yoshinori Saito:ワタナベさんは?

Hiroshi Watanabe:ん~と、まず「アンビエント」って言葉で入ってきたのはエレクトロ・ミュージックにどっぷりハマってからなのは確かなんだけど、例えば、ずっとアンビエントをリリースし続けていた〈FAX+49-69/450464〉ってレーベルあるじゃないですか。

Matsusaka Daisuke:はい、ありますね。

Hiroshi Watanabe:それとか、『Mixmag』に付録で付いてたMixmaster MorrisのDJミックスとかを聴きまくったり、The Future Sound Of London、The Orbあたりのスタイルとか、アンビエント・ハウスとかアンビエント・テクノとか言われたりしてたものを聴いてましたね。もちろんAphex Twinも。Aphex Twinについては、当時ボストンでライヴを見たんだけど、すごくハードで激しいぶっ飛んだパフォーマンスをしつつ『Selected Ambient Works Volume 2』みたいな作品を出してるギャップがなんかすごく面白かったですよね。と同時にきっと彼も実はニューエイジとか、もっとさかのぼったエレクトロニック・ミュージックの根源からすごく好きな人なんじゃないかなと感じて、僕がテクノとかダンスミュージックに触れる前に好きで聴いてたようなニューエイジ・サウンドに、より近いなぁって思ってました。

Yoshinori Saito:そういった原初の電子音楽のエッセンスが含まれているというところにもアンビエントの魅力的な部分を感じたと。

Hiroshi Watanabe:そうですね。より元を辿っていくと「アンビエント」と題して音楽を作ったのはBrian Enoが最初なんですよね? 随分とさかのぼるけど。

Matsusaka Daisuke:音楽に、この「アンビエント」っていう単語を当てはめた最初と言われてますよね。(※『Ambient』シリーズ第1弾は1978年リリース)そういえばさっき話した〈Virgin〉のコンピにはBrian Enoの曲も入ってて、他にもTangerine DreamやAshraなんかも入ってたけど、同時に聴いていたAphex Twinとそんなに差を感じなかったですね。

Hiroshi Watanabe:うんうん、確かに。

Matsusaka Daisuke:だからそれが古い音を集めたものだと思ってなかったですね。ところがライナーを読んでいくと70年代とかすごく古いものばかりで。

Hiroshi Watanabe:(笑)

Matsusaka Daisuke:テイストとして集めたことで最新の音に聴こえた、っていうあの感覚は未だに引きずっているところがありますね。斉藤くんは?

Yoshinori Saito:僕は高校の時にテクノを聴いている友達に紹介してもらったのがAphex Twinの“On”のReloadミックス。そこからGlobal Communicationのアルバムをいろいろ聴いて、そこでアンビエントの世界は美しいなと感じるようになったんです。Global CommunicationはTangerine DreamとかBrian Enoとかデトロイトテクノの影響も受けてるし、そういう意味では第2世代みたいなところの音に結構影響を受けました。そしてやっぱり電子音楽として、いろいろカラフルなサウンドがあったり、一つにこだわっていない感じが楽しいなってところでアンビエントに惹かれましたね。

Matsusaka Daisuke:色々あって美しいってすごく大事だよね。

Yoshinori Saito:では、みなさんはいま作品を作られてますが、アンビエントとして作った一番最初ってどんなものでした?

Matsusaka Daisuke:え~っとねぇ……見よう見まねですらない、アンビエントの想像だけで作ったのは高校生の時。

Yoshinori Saito:ほうほう。

Matsusaka Daisuke:でも全然アンビエントじゃなかった。

一同:(笑)

Matsusaka Daisuke:まだアンビエントをそんなに聴いたことない頃に、テレコとピアノでテープスピード変えたりしながら多重録音して。

Hiroshi Watanabe:アコースティックなサウンドを多重録音したんだ?

Matsusaka Daisuke:そうですね。当時読んだ本にBrian Enoが始めたアンビエントっていう音の手法がテープループだって書いてあって、やり方もわからず想像で真似してみました。

Yoshinori Saito:ワタナベさんは初めてアンビエントに触れた時はもう音楽は作られてました?

Hiroshi Watanabe:たぶん僕自身が音楽に対してカテゴライズすら出来てない幼少期の記憶で言うと、レコードとかよりも父親の影響が大きくて、父親が当時映像系の音楽作家になっていくなかで、アナログシンセサイザーを多用しながらマルチ録音をやっていて。その時に直に見たり聴いたりしたことで、楽器の音というより、ああいう電子音でここまで人の感覚を刺激できるっていうのは何なんだろうっていう興味で吸い込まれていったんですよね。

Matsusaka Daisuke:へえ~! なるほど!

Hiroshi Watanabe:ちょうど同時期ぐらいに、 小学生の時に参加した夏休みの山小屋に泊まるサマーキャンプみたいなのがあって、その時に父親が山小屋の中で機材を持ち込んでライヴをやったことがあって。そのライヴがまさしくそのまま「アンビエント」だったんですよ。

Matsusaka Daisuke:えー!

Yoshinori Saito:すごいですね!

Hiroshi Watanabe:シンセを数台使って弾いていて、その山小屋の中の空間がシンセの音だけでブワーッと埋め尽くされたのを感じて、「うわ、なんだこれ!」って思って。父親が音楽をやってるという事は子供ながらに当然分かっていたんだけど、実際に父親がやってる音楽ってのを初めて体験して、目の当たりにしたんですよ。そこでシンセサイザーの音に吸い込まれる様に興味を持ったっていうのがホントの最初のきっかけで、そこからスタジオに遊びに行ってはシンセの音を出させてもらったり、その後に父親が使わなくなったKORGのアナログシンセ800DVを譲って貰えた事が自分自身のシンセ体験のスタートで、実際により本格的に楽曲を作りだしたのは中学生からでしたね。やっぱり作ろうと思って作った曲はアンビエントでしたよ。

Yoshinori Saito:なるほど。

Hiroshi Watanabe:僕自身のダンスミュージックをより掘り下げて説明すると、バンドでギターを弾いたり、高校ではクラシックを学んだりしたけど、幼少期からずっと自分が引っ張ってきた音楽に対する欲望の根源はまさしくエレクトロ・サウンドとアンビエントなものしか求めてなかったから、そこにメランコリックなスタイルやハーモニーやメロディーがずーっとこびりついて潜んでて。ボストン留学中に改めてクラブミュージックという括りで言うダンスミュージックのシーンや、テクノに触れちゃった時に素直に感じたのは、自分がそれまでに思い描いて作っていた今で言うアンビエント・ミュージックに何か格好良いビートを足していけば自分のスタイルでオリジナリティのあるダンスミュージックが出来るんじゃないかと思えたのが、まさしくこの活動の導入でした。だから、例えばアルバム出してビートレスバージョンを出すっていうのは逆転発想でも何でもなくて、ビートレスなのが実は元で、それがあるからこそビートが乗っかった時に初めて100の状態になるという感じですね。

Yoshinori Saito:ビートも電子音を構成するひとつということですね。

Hiroshi Watanabe:そうそう。

Yoshinori Saito:いや~、幼少期からの深い話ですね。

Hiroshi Watanabe:きっかけとしてはすごくラッキーだったよね。その頃の父親の作品は世に出てないものも全部保存されてるから、いつでも聴けるんだけど。

Matsusaka Daisuke:それ是非聴きたいですね!

Yoshinori Saito:では、リスニングでのアンビエント・ミュージックのフェイバリットを教えていただけますか?

Matsusaka Daisuke:誰にでもお勧めできるっていうのは〈Kompakt〉の『Pop Ambient』のシリーズですね。Off-Toneの音的な構想を考えるときにずっと中心にありました。2001年からだったかな? 確か。これを最初に聴いた時は衝撃でした。

「アンビエント」っていうタイトルを付けてる中に4つ打ちの曲(Jörg Burger “Men Of Many Sayings”)も入ってるんですよね。

Yoshinori Saito:あぁ、なるほど。

Matsusaka Daisuke:確かにずっと以前からアンビエント・ハウスっていう言葉はあったんですけど、ただアンビエントではなく、しかも頭に「ポップ」って付けて4つ打ちの曲も入れている。このセンスに、これはパーティーミュージックだし、チルアウトとも違うところを目指してるんじゃないかと思って、こんな音を中心にパーティーが出来るんじゃないかと妄想したのがOff-Toneを始めるきっかけにもなっています。このシリーズは未だにクオリティーは変わらず幅も広くなり、ここからいろいろ掘り進めることも出来るセレクトですし、入門用的にはこれ以上ないくらいおすすめですね。

Hiroshi Watanabe:ダイスケ君が言っているように、『Pop Ambient』はもちろん最高のひとつだと僕も思っていて、聴いた時に僕もすごく衝撃を受けましたね。「Pop Ambient」と題した作品群から感じる新たな指向性や快感、刺激を彼らが見せてくれたものって大きいと思う。

Yoshinori Saito:その『Pop Ambient』シリーズに共通してる要素ってなんでしょうか?

Hiroshi Watanabe:コンパイルしてる彼らの共通してる意識というかセンスが間違いなくあるよね。

Matsusaka Daisuke:初期のセレクトは変名も多かったですけど、今や質感は変わらずにぐっと幅広い人選になって、広がり方と芯のブレなさはすごいですね。

Hiroshi Watanabe:その芯になる基本は、アンビエント・ミュージックの中でも究極のループミュージックなんだと思うよ、「Pop Ambient」のスタイルって。

Matsusaka Daisuke:そうですね。

Hiroshi Watanabe:ひたすらループさせながら微妙な展開をする楽曲が多いですからね。だからKAITOのビートレス作品も定義で言ったらアンビエント・ミュージックにはなるんだけど、『Pop Ambient』には入らないんですよ、絶対に。

Yoshinori Saito:ほぉ……。

Hiroshi Watanabe:あれは『Pop Ambient』に入るアンビエントのスタイルに当てはまらないんです。これは肌で感じるし、僕が打ち出してる音での解釈と彼らが選ぼうとしてるスタイルとはマッチしてないんですよね。

Yoshinori Saito:ワタナベさんの自分なりのアンビエントの解釈ってどんなことなんでしょう?

Hiroshi Watanabe:僕の音楽のスタイルって、1音、2音、3音だけで終わらずに徹底的にいろんなものを被せて被せて、っていう手法が多くあるんですけど、その中にある自分が音の空間、例えば上下プラネタリウムのようなドームに包まれているとして、そこが全ての音で包み込まれた時に、音があらゆる方向に進むと常にいろんな映像が展開するような、そんな感覚を音だけで感じられて魅了できるものであって欲しいなと。あ、でもこれは自分自身のアンビエント楽曲の事についてだけですけどね。

Yoshinori Saito:なるほど。松坂さんはご自身のアンビエント感についてはどうですか?

Matsusaka Daisuke:え~と、初めてアンビエントを聴いた時から、これがアンビエントなのかなと思っていた要素があるんです。それは聴いていると必ず何分か後に実際の部屋よりも広く感じ始めるというもので、これは今でも曲の善し悪しを判断する基準にもなっていたりします。

Hiroshi Watanabe:それって、その音だけしか聴いてないのに、自分がいる場所が異空間に感じたりってことだと思うんだけど、そこは極めて共通してますね。

Matsusaka Daisuke:そうですね。

Yoshinori Saito:お話を伺ってると、やっぱり空間の変化を楽しむ音楽なのかなって改めて思いますね。

Hiroshi Watanabe:そうですね、空間ですね。

Yoshinori Saito:あの、音楽以外でも結構なんですけど、アンビエントを感じる物事や瞬間とかって何かあります?

Hiroshi Watanabe:なんか神聖なものの類は大抵そういうところに結びついちゃいますよね。教会に入った瞬間とか。

Matsusaka Daisuke:うん、ありますね。

Hiroshi Watanabe:お寺でも神社でもすごく静寂があって、その空間が持っているパワーに対してアンビエンスを感じるってのはありますよね。イメージと音の行き来が容易な音楽だから、そういう神聖な場所の精神性には簡単にシンクロするし、それって最大限の感覚を使って感じようとした時に起こることだと思うから、またそういう体験をしたいと思う理想や希望がこの音楽には潜んでると思いますよ。

Yoshinori Saito:松坂さんどうですか?

Matsusaka Daisuke:そうですね。いまの話は比較的共有しやすい普遍的な個人感覚みたいなことだと思うんですけど、もうひとつ、逆に共有は難しいけれど、記憶や文脈によって引き起こされる特殊な個人感覚でのアンビエントってのもあると思うんです。それは例えば、天気予報のBGMのようなフュージョンだったり80’sだったり、その音に対する記憶の日常性を逆手にとった遊び方ですね。もっと言うとシカゴの〈Dance Mania〉のミックスなんかも、時にはアンビエントとして聴けたり、、まあ物は言いようですね(笑)。

Yoshinori Saito:はははは(笑)。

Matsusaka Daisuke:要するにフォーマットでの区分を受け入れるんじゃなくて、いろんな音楽をアンビエントとして捉えてみるっていう遊びですね。

Yoshinori Saito:アンビエントという視点、ってことですかね。

Matsusaka Daisuke:そうそう。「こんな場所で、こんな音を聴いてみたら、こんな風に聴こえた」っていう発見がすごく重要で、そのリラックスした態度をたまたま「アンビエント」と呼んでるんだという提案がOff-Toneでも出来たらいいですね。

Yoshinori Saito:「アンビエント」って言葉には、メンタリティーだったり空間性だったり視点だったりといろんな可能性を秘められてるんですね。

Matsusaka Daisuke:それこそBrian Enoのエピソードにしても、入院していた時にお見舞いでもらったレコードを聴いたら、ステレオのボリュームが小さい上に、片方のスピーカーしか鳴っていなかったんだけど、それが新しく聴こえたわけで。だから、想定外の聴き方をすることで違った音楽性が生まれるというのがアイデアの出発点だったと考えると、何でもいろんな聴き方をしてみるってのは良いんじゃないかなと思います。

Yoshinori Saito:これ、スーパーとかでかかってる音もそういう耳で聴いちゃうようになっちゃうんじゃないですか?

Matsusaka Daisuke:うん、この沼は深いですよー。

一同:(笑)

Yoshinori Saito:Off-Toneはそういう多角的な楽しみを提供しているパーティーわけですが、昨今いろんなフェスが開催されている中で、松坂さんは以前から「Off-Toneはフェスじゃない」と仰ってましたが、その差ってのはどういうものなんですか?

Matsusaka Daisuke:うちみたいな中小規模の野外パーティーすら「フェス」と呼ぶ、ある種の形骸化が起きている背景には、大規模イベントに見られるような管理体制に身を任せる事で自己責任を放棄出来るという気楽さを求めている節があると思います。でもその気楽さは言わば、“最後は誰かの責任に出来る”という保険によって得られる疑似開放感だと思います。呼び方なんてどうでもいい細かいこだわりなんですけど、透けて見えるそういった風潮には少し危機感ありますね。でも現場でのリアルなコミュニケーションがそれを解消していってくれると思います。アンビエントって一番能動的な音楽だと思ってますから、受動性を助長するようなことは避けたいです。

Hiroshi Watanabe:そうか、そこまで考えたことなかった(笑)。でも今の意見を聞いてると確かにそうですね。あ~なるほど、って今初めて思いました。これからそういう視点でも各イベント全体を感じてみたいですね。

Yoshinori Saito:野外って部分には何かこだわりありますか?

Matsusaka Daisuke:そもそも音楽を外で聴くのが大好きで、時間でいうと明け方から日が登り切るまでの風景の変化と音の聴こえ方の変化が最高です。時間が止まったような夜中にぴったりな音楽もあって、それももちろん大好きで、その夜の部分が良ければ良かったほど、朝の明るくなっていく過程がまるで止まっていた時間が動き出すように情報が流れ込んで来て、毎回見たことないくらい世界が美しく感じられます。でもそれは実はありふれた日常の一つを切り取っただけの光景で、毎日そんな夜明けが繰り広げられているということに最も感動します。これは最初、野外パーティーで踊って感じたことですが、ある時、激しく踊りながらではなくても非常に似て非なる感覚を得られることに気付いたのが野外開催につながっています。あと単純に、屋内開催してた頃は、夕方やると「夜中にやって欲しい」、夜中にやると「子供居るから夕方がいい」と毎回要望があったので、両方を叶えるのは野外しかないんですよね。

Yoshinori Saito:ワタナベさんにとって屋内と野外で出てくるサウンドの差みたいなものって感じられてると思うんですけど、いかがですか?

Hiroshi Watanabe:基本的には音そのものでどこまで旅ができるかなんだけど、やっぱりああいう音楽だから、ライブをやらせてもらった時間帯含めて場所の環境が演奏する側にパワーをくれるっていうのは十二分に感じますよね。

Matsusaka Daisuke:本当そうですね。感じますね。

Hiroshi Watanabe:結局クラブ空間の中って、音の中に入り込んでいって上を向いて感極まったとしても、 空を向いたつもりではあっても天井じゃないですか? だけど外だと本当に空であり、宇宙であり、無限に音が抜けていく感覚の場所で音を出させてもらっているんだっていう喜びはもう計り知れないんですよね。

Yoshinori Saito:そういう部分って、Off-Toneでも表現したいところだったりするんですかね?

Matsusaka Daisuke:もちろん。技術的な面でも、近隣を考慮した際に実際出せる音量は分かってるんですが、それ以上に感じられるシステム選びであったり、実際以上の空間に感じられるセッティングであったりというのを毎回追求しています。今年もさらに進化したアイデアを盛り込んでますよ。

Hiroshi Watanabe:お~! 楽しみ!

Matsusaka Daisuke:ところで野外の話はそんな感じなんですが、『CAMP Off-Tone』にはインナースペース(Inner Space)という屋内のスペースもあって、斉藤くんにはそっちのオーガナイズをお任せしていてますよね。空間作り的なことではどうですか?

Yoshinori Saito:とにかく1番リラックスできるようにってことを心がけてますね。隣がマッサージ屋さんですし、お風呂への入り口ですし、寝たければ寝てもらってもいいし。出演者については、そういう空間に合う人にお願いしています。例えばクリスタルボウルの山本コヲジ君なんかは、まずあの会場の山自体が水晶なんですよね。だからこれは共鳴してくれたら良いなぁなんてことで、いつも最初と最後をお願いしてるんです。初めの頃こそ人もまばらでしたけど、去年なんかはオープンしてすぐに人が押し寄せて、その人達がすぐ横になってるというだんだん怪しい雰囲気になってます(笑)。

Matsusaka Daisuke:まぁ、オープニングセレモニーだし、大事だよね。

Yoshinori Saito:そう、結構大事なんですよ。

Matsusaka Daisuke:でも、そういう儀式的な意味のものも重々しくなり過ぎずに体験してもらえる雰囲気ができているのが、あのインナースペースの良さかな。ヒーリングやメディテーションをとことん追求した世界そのままだと、あの現場には重いんですよ。入り口を見せてあげるくらいがOff-Toneにはちょうど良い。だからと言ってラフにやっちゃうのは1番ダメで、下地となる技術は本物なんだけどライトな見せ方をしてあげたいなって、斉藤くんにお任せする時にそんなことが出来ないか相談しましたよね。

Yoshinori Saito:「Pop Healing」ですね(笑)。

一同:(笑)

Yoshinori Saito:では、今後未来にはどんな感覚でアンビエント・ミュージックって捉えられていくと思いますか?

Matsusaka Daisuke:捉えられ方……、もっとこう……曖昧になっていって欲しいですかね。

Yoshinori Saito:曖昧に……?

Matsusaka Daisuke:そう、なんだろう……精神性って言うと重いんですけど……。

Yoshinori Saito:カルチャーみたいなことですかね?

Matsusaka Daisuke:そうそう、総合文化的に広まっていくと良いかなと思います。よくヒップホップが音楽やアートワークを含めて総合文化だと言われるように、アンビエント・ミュージックもまたそれを取り巻くいろんな要素、例えばヒーリングだったり、パーマカルチャーだったり、アートだったり、哲学だったりが、もっとライトな形で日常に溶け込んでいくきっかけとなっていくといいですね。

Hiroshi Watanabe:そういう意味では、例えばアウトドアショップのCDコーナーにKAITOが並んだりするくらいの世の中になると良いなぁ。

Matsusaka Daisuke:それ楽しいですね。

Hiroshi Watanabe:ね。そういうより一般に身近なお店に届くようなね。やっぱり、どう届いてくれるかって作り手として常に大事じゃないですか。

Matsusaka Daisuke:そうですね。

Hiroshi Watanabe:あとは、きっとアンビエントっていう言葉じゃない別の呼び方でこういう空間演出を指す言葉が出てくると思うし、そうするとまた進化して盛り上がるのかもしれないですよね。ただ、作り手側の話で言ったら、どう進化するとかは考えてない。ただひたすら想うものを追い求めてるだけですし。それが気付いたら後からカテゴライズされたり、もしくは早過ぎて誰も付いて来れなかったりするわけじゃないですか。時代にタイミング良くシンクロして結果的に世の中にフィーチャーされるかされないかは分からないけど、とにかく音を作り続けるしかないってことですよね。

Yoshinori Saito:本当にタイミングってありますし、耳も常に進化しますもんね。というわけで、今年も『CAMP Off-Tone』開催時期の秋が差し迫っておりますが、9月8日(火)にはDOMMUNEの方でOff-Toneの特集を組んでいただけるということになっておりまして、まずそこへ向けての意気込みなんかいただけたらなと。

Hiroshi Watanabe:やっぱり考えるのは、そういうテイストでのDJをどう見せていくかですよね。

Matsusaka Daisuke:アンビエント・セットでの出演は初めてですか?

Hiroshi Watanabe:初めてですね。

Matsusaka Daisuke:更に楽しみですね。

Hiroshi Watanabe:あと今回新しい試みで、VJ素材に写真を使うじゃないですか。これが実際にPCの画面を見て、聴いてくれてるリスナーにどんな感じで届くんでしょうね。

Matsusaka Daisuke:PCの画面って要するに「窓」だなと思って、それならば窓から見える風景という意味でワタナベさんの写真作品を使うことを思いついたんですよ。あと自分の時はクサカベタイキ君のライブペイントをVJ素材に使用します。

Yoshinori Saito:なるほど~。これまでのDOMMUNEにはなかなか無い企画ですよね。

Matsusaka Daisuke:OKしてくれた宇川(直宏)さんには感謝してます。DOMMUNEの特殊なのは、目の前には居ない数千人も見てるわけですよね。その中でどんな音を提案するのか、そしてどんな反応があるのかってのが楽しみですね。

Yoshinori Saito:そうですね。僕もライヴをさせてもらいます。変なヒーリングをやります。

Matsusaka Daisuke:変な(笑)。ちなみに出演はワタナベさんと僕と斉藤くん、そして『CAMP Off-Tone』開催地、山梨のアーティストということでmoshimossがライヴをやってくれますのでお楽しみにしていただきたいですね。

Yoshinori Saito:はい、では最後に来たる9月26日の『CAMP Off-Tone』への意気込みや、見どころをお願いできますか。

Hiroshi Watanabe:僕はOff-Toneでは初めてDJでの出演なので、そういう意味で今までと違った部分を見せられたら良いですね。去年の朝やった2時間のKAITO Liveは、多分あそこまでやり切れるアンビエントライヴはもう今後そうそう無いんじゃないかなって思うくらいだったから、次の展開としてDJっていう自分の手法でどこまであの空間とシンクロ出来るのかっていうのが本当に楽しみですね。たぶん自分にとっても味わい方がまるで違うはずだからそこも楽しみにしてます。

Matsusaka Daisuke:僕はそうですね……アンビエントパーティーなので、今まで以上に自由な発想の楽しみ方を想定して来てほしいなと思います。ひとつはアウタースペースを色んな形で使って欲しいです。使用方法を限定しないようにフロアではなくスペースって呼んでるので。例えばテーブルと椅子持ってきて食べてても良いし、寝袋広げて横になってても良いですしね。森の中でアンビエントを大勢で聴く楽しみ方をみんなで自由に作って欲しいんです。とは言え、その辺も全部気軽に捉えて欲しいですけどね。「おいでよ、アンビエントの森へ!」って感じですね(笑)。


Kaito aka Hiroshi Watanabe (Kompakt)

ドイツ最大のエレクトロニック・レーベルKompakt唯一の日本人アーティストとしてKaito名義の作品を発表する傍ら、ギリシャのKlik Recordsを拠点としても活動を続けるHiroshi Watanabe。 2002年にリリースされたKaitoの1stアルバム『Special Life』に収録された「Intension」がFrancois K.のミックスCDに収録されるなど瞬く間に大反響を呼び、10年以上が経過した現在も色褪せることのない名曲として語り継がれている。その後、Kompaktのコンピレーション・アルバム『Total 6』にも収録された表題曲を含む2ndアルバム『Hundred Million Light Years』をリリース。この2枚のアルバムで一躍Kaitoの名は世界中に浸透し、バルセロナの“Sonar Festival”などのビック・イベントでライヴを披露、屈指のパーティー・アニマル達を熱狂の渦に巻き込んだ。 Kaitoのオリジナル・アルバムでは常に対になるビートレス・アルバムも制作され、繊細かつ美しい旋律により幅広い音楽ファンに受け入れられている。3rdアルバム『Trust』に対しての『Trust Less』では更にアコースティックな要素も取り入れ、リスニング機能をより高めた作品となった。
本名のHiroshi Watanabe名義では自身最大のセールスを記録した1stアルバム『Genesis』に続き、2011年に『Sync Positive』を発表。タイトルが示す通り、リスナーを鼓舞させる渾身の作品としてロング・ヒットとなっている。またリミックスを機に交流を深めてきた曽我部恵一との異色コラボレーション・アルバム『Life, Love』ではメランコリックな音像と歌声が溶け合った叙情的なサウンドで新境地を切り拓いている。
1994年からスタートさせたDJ活動は時代の移り変わりと共に2004年にラップトップでのプレイ・スタイルを確立させ、2009年には様々な表現に挑み続けるべくプロフェッショナルDJコントローラー「TR-1」をVestaxと共同開発。後に現場での感覚を経て「TR-1 MKII」へとアップグレードさせている。一方、ニューヨーク在住時代に出会ったグラフィック・デザイナー、北原剛彦とのダウンテンポ・プロジェクトTreadでは、シンプルで柔らかい上音と乾いたビートの融合を絶妙のバランスで確立し、ハウス、テクノ、ヒップ・ホップなどジャンルの壁を越えて多方面から注目を浴びることに。レーベルnormから限定生産された5枚のアルバムと4枚のEPは不変の価値を持つ名盤として知られている。 2013年にはKompaktの20周年を記念して制作された二枚組DJミックス『Recontact』をリリース、更にKaito名義としては4年振りとなるアルバム『Until the End of Time』を発表。新生Kaitoとも言える壮大なサウンドスケープが描かれている。


Matsusaka Daisuke (Off-Tone)

DJ、作曲家、エンジニア。
アンビエントパーティー「Off-Tone」を主催。
これまでに2タイトルのアルバムと3枚の12インチシングルのリリースのほか多数のコンピレーションへ楽曲を提供。
バンドのプロデュースやアレンジ、CMや企業PV等の音楽制作、各種マスタリングも手掛けている。
1998年より開始したDJでは、ロングミックスによるシンプルなグルーヴに大きなストーリー展開を乗せる。
ジャンルを問わないそのスタイルで、11年に渡るFuji Rock Festival「Day Dreaming」サイトをはじめ、Ruralなどのフェスやパーティーに、ダンス、アンビエントなど内容問わず出演し、少しでも多くの音楽を一人でも多くの人と最も素晴らしい流れで共有することを目指して活動中。


Yoshinori Saito(TACMI.ST)

1981年 しぶしぶ生誕
1988年 なんか悔しくてピアノを習い始める
1995年 初めてシンセサイザーを手に入れてしまう(YAMAHA EOS B900)
2000年 TRI-FORCEとしてアーティスト活動開始
2003年 日本大学芸術学部音楽学科情報音楽コース卒業
2005年 TRI-FORCE “Enrance to Reality” リリース
2007年 OCOT “Reach Into The Light” リリース
2011年 TRI-FORCE “Tales of the beginning” リリース
2012年 ”Eclipse Digital Music School” Ableton Liveコース講師を担当
2013年 TRI-FORCE、ageHaアリーナ初出演(アンコールで半べそ)
2014年 Patrícia Neves監督 “Nuclear Empire” サウンドトラックを担当 
2015年 電子音楽教室 “TACMI.ST” 開校
作曲家でアーティストでAbleton認定トレーナーでヒーラーのシンセパパです。



CAMP Off-Tone 2015

Date: 2015/9/26 (Sat) - 27(Sun) All night
Place: マウントピア黒平(山梨県甲府市黒平町 秩父多摩甲斐国立公園内)http://kurobera.blog0.jp/
Open: 9/26 Open 15:00 / Start 17:00
Close: 9/27 10:00予定

■ Outer Space
LIVE: hakobune, Sound Furniture, moshimoss, sorto&nodo
DJ: Sebastian Mullaert (aka Minilogue), Kaito aka Hiroshi Watanabe, Artman, DJ 蟻, Matsusaka Daisuke, fishu

■ Inner Space
LIVE: SUGAI KEN, adzuki, Yoshinori Saito
DJ: Akey, Morrissy
クリスタルボウル: 山本コヲジ
Work Shop: みんなで作ろう、アンビエントミュージック 講師:Koyas(レーベルpsymatics主宰/Ableton認定トレーナー)

Kids Area Workshop: 遊びの教室 by mamanomad, 虹色染めガーランドづくり, シャボン玉, エポンテスタンプ
Candle Workshop: FUJICANDLE

Sound: fishu
Visual: idealsolution
Decoration: Fu-Fu-Artworks
Candle: FUJICANDLE Art: 檻之汰鷲(ORINOTAWASHI)

Performance: 「ほのぼの大道芸Show!」ピンキー・チーズ
Body Tuning: Lily, Unplug Tokyo

BAR & FOOD: まるまん, G3 (from いにしな, 風来組), Natural, Craft Beer Diner TAKIEY, Off-Tone食堂


チケット: 前売:7500円  (限定200名)
※ホームページおよびイープラスにて販売中

CAMP Off-Tone 2015 特設サイト http://www.offtone.in/camp/
Off-Tone SHOP  http://offtone.thebase.in/
イープラス http://eplus.jp/sys/main.jsp